研究課題/領域番号 |
18K03798
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹内 希 東京大学, 地震研究所, 准教授 (90313048)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地震 / 海底観測 / リソスフェア / アセノスフェア / 地球内部構造 / 実体波 |
研究実績の概要 |
本研究計画では,海洋リソスフェア・アセノスフェアの減衰構造の海洋底年代依存性を推定することにより,「なぜリソスフェア硬く,アセノスフェアは柔らかいのか?」という根源的な問いに対する答えを求めようとするものである.本年度は解析に用いるデータベース・データセットを構築するとともに,減衰構造推定の準備として,広帯域海底地震計の長周期成分(0.1-0.01Hz)を用い,P波速度構造推定を行った.また新学術プロジェクトとの合同プロジェクトとして,地殻化学組成モデリングに関する研究も行い,本計画で得られる結果の解釈の準備とした. データベース・データセットの構築は,Stagnant Slab Project, NOMan Project で設置したBBOBSの鉛直動波形の中から,2-4Hzの短周期地震波形エンベロープが良質なデータを選び出し,データベース化した.一方で,P波速度構造推定に関しては,まず広帯域海底地震計(BBOBS)の波形を波形インバージョンするソフトウェアを開発した.既存のソフトウェアを拡張し,リソスフェアの方位異方性も考慮できるようにした.そして開発したソフトウェアを用い,NOMan Projectで取得された北西太平洋のBBOBSデータに対し波形インバージョンを実施した.鉛直動成分のP波部分を解析し,海洋上部マントル構造を推定した.リソスフェアの方位異方性を考慮することが正確な速度構造推定に対して重要であることを示すとともに,アセノスフェアに顕著なP波速度低下が検出され,P波速度低下率がS波速度低下率の2/3程度に達することを見出した.このような大きなP波速度低下は,リソスフェア・アセノスフェアの成因を制約する.したがって,成因を突き止めるという,本プロジェクトの最終目標に対する,大きな一歩であると言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標である,解析に用いるデータベース・データセットを構築は終了した.また来年度以降の計画の基礎である,速度構造推定もおおよそ終了している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度推定された速度構造モデルを用い,当初計画通り減衰構造推定を実施する.減衰構造の海洋底年代依存性から,リソスフェア・アセノスフェアの成因を制約する.
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次年度使用額が生じた理由 |
北海道胆振東部地震など自然災害が多発し,理論波形の新たな計算手法の定式化や減衰構造推定システムの構築に,想定外の時間を要したため.
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