研究実績の概要 |
間隙流体圧をパラメータとした絶対応力場のモデル化(Terakawa and Hauksson, 2018)を用いて,まず,Yang et al. (2012)のメカニズム解カタログを用いて,1992年ランダース地震震源域(南カリフォルニア)の絶対応力場をモデル化した.また,ランダース地震のすべりモデル(Wald and Heaton, 1994)と変位の食い違い理論によるすべり応答関数(Fukahata and Matsu'ura, 2005)を用いてランダース地震による応力変動場を計算し,これを本震直前の絶対応力場と重ね合わせることにより,ランダース地震前後の絶対応力場をモデル化することに成功した.本手法では,応力6成分が直接得られるため,大地震前後の弾性歪エネルギーの変化を評価することが可能であり,これは従来の方法では得られない成果である.地震は弾性歪エネルギーを解放するように発生し,解放したエネルギーは,放射エネルギー・破壊エネルギー・熱エネルギーとして消費される.このうち,放射エネルギーは,地震波の解析から見積もることができる量であり,ランダース地震の場合は,4.3×10^16Nmと見積もられている(Kanamori et al, 1993).大地震前後の弾性歪エネルギーの時間変化は,絶対応力場のレベルに依存する.本研究では,ランダース地震による弾性歪エネルギーの変化量と間隙流体圧パラメータの関係を定量的に示し,観測された放射エネルギーの変化量を境界条件に,間隙流体圧パラメータの最適値を介して絶対応力場のレベルを推定した.この結果,ランダース地震震源域の偏差応力の大きさは深さ5kmで44MPa程度であると見積もられ,南カリフォルニアの内陸部は基本的にAnderson-Byerleeの標準状態にあることがわかった.
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