研究実績の概要 |
本課題は,地震のメカニズム解から地殻の絶対応力場を推定する独自の手法を開発し(Terakawa and Hauksson, 2018),日本列島域の絶対応力場を理解することを目指すものである.2020年度は,2016年熊本地震震源域の絶対応力場の推定の一環として,まず,良質な地震メカニズム解のデータセット(データ数:2516個,期間:1996年1月1日~2016年4月13日,カタログ:Matsumoto et al., 2018, F-net モーメントテンソルカタログ,地震の規模:M > 1)から,CMTデータインバージョン法(Terakawa and Matsu'ura, 2008, Terakawa, 2017)により九州地域の背景応力場(地震発生前の応力場)のパターンを推定誤差と共に求めた.九州地方の応力場は,南北方向に最小圧縮軸を持つ横ずれ断層~正断層型の応力場であり,良質なデータセットから精度良く応力場を推定することができた.また,CMTデータインバージョン法を用いることで,応力場のパターンが3次元空間内の連続関数として得られたことが,本課題の遂行において本質的に重要となる. 次に,Asano & Iwata (2016)による滑りモデルから熊本地震による応力変動分を計算した.これは,絶対応力場を推定するために必要不可欠なデータとなる.更に,本課題に関連するテーマとして,地震のメカニズム解から間隙流体圧場を推定する独自の手法(Terakawa et al., 2010)を用いて,熊本地震震源周辺域の間隙流体圧場を推定した.これらの結果に基づき,熊本地震前後の地震活動度の変化における応力と間隙流体圧の役割についても調べた(Nakagomi et al. 2021).
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