研究課題/領域番号 |
18K03804
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
兵頭 政幸 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 教授 (60183919)
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研究分担者 |
安田 裕紀 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 講師(研究機関研究員) (50825875)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 太陽活動 / 銀河宇宙線 / スベンスマルク効果 / 気候変化 / 更新世 / 地磁気エクスカーション |
研究実績の概要 |
本研究は、地質時代の気候における太陽活動の影響を検出し、その影響が出る背景とメカニズムを解明することを目的として、千葉セクションコアTB2と福井県水月湖年縞堆積物コアFukui-SG14を中心に分析を行った。本研究代表者らは、これまで地磁気逆転時に地磁気強度が減少し銀河宇宙線が増加して、下層雲が増加し日傘効果で寒冷化した地質学的証拠を見つけているた。本研究では、地磁気と同様に銀河宇宙線量を制御している太陽活動が銀河宇宙線を介して気候に影響を及ぼすかどうかを検証する。銀河宇宙線量は、その指標となる10Beの堆積物中濃度で調べた。その分析は東京大学タンデム加速器研究施設を使って行った。また、コアTB2では高精度の生物生産量変化データは存在するが、花粉化石含有量が少ないため気候データが欠けている。そこで、大阪湾1700mコアの花粉分析を行って、気候変化を調べた。コアFukui-SG14は太陽活動周期が卓越する古環境変動はまだわかっていないので、その探査のため磁気分析データを解析し、追加の分析も行った。 コアTB2については、更新世前期―中期境界付近の生物生産量に200年周期が卓越することが分かっている範囲(深度36.0~37.5m)を2㎝間隔で10Beの分析を行った。また、その生物生産量変化が気候を反映しているかどうか調べるために、同範囲に相当する大阪湾1700mコアの堆積物について約50年の解像度で花粉分析を行った。コアFukui-SG14については、磁気分析データを解析し、地磁気エクスカーション的古地磁気変動が見つかったので、その深度範囲について2.5~5.0㎝間隔でdiscrete試料を採取し、段階熱消磁を用いた詳細な古地磁気分析を行った。 また、コアTB2の古海洋データと比較する目的で、中国レスの磁気分析・古環境分析も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの成果としては、花粉分析結果よりコアTB2の生物生産量変化に見られた200年周期は気候変化、特に気温変化を反映していることが分かった。このことは、Hyodo et al. (2017)の論文では可能性が指摘されただけであったのが、本研究で気候変化を反映することを示すことができ大きな前進である。さらに、10Be濃度データと生物生産量変化データの比較から、200年周期卓越範囲の一部に銀河宇宙線量変化と相関していることも分かった。相関を示さない部分もあるので、太陽活動以外の気候要因を考える必要がある。コアFukui-SG14からは、完新世にまだ200年周期など太陽活動周期は見つかっていない。しかし、更新世末期に地磁気エクスカーションを二つ見つけ、一つはよく知られたラシャンエクスカーション、もう一つは未発見のエクスカーションである。エクスカーション時にも銀河宇宙線を介した気候変化が起こる可能性はあるので、今後この部分について分析を進める。ラシャンエクスカーション付近には磁化強度に200年周期が卓越する部分が見つかったが、これを作る原因が地磁気なのか気候なのか現時点では不明である。 以上のように、現時点で研究計画の時点で予想したとおりの結果が得られており、順調であるといえる。コアFukui-SG14から地磁気エクスカーションが見つかったことは予想外の大きな成果である。エクスカーション時の銀河宇宙線を介した気候変化は報告がないので、もし見つかれば大きな成果となる。
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今後の研究の推進方策 |
10Beを用いた太陽活動検出を行うために、コアTB2については、地磁気逆転直後の生物生産量変化に200年周期が卓越する部分について引き続き10Beの分析を行う。また、対象を地磁気逆転の約1万年後の高海水準期MIS 19.1に見つかっている200年周期が卓越する範囲に広げ、分析の重心はこちらに移す。さらに、コアTB2の古気候データを補強するため、粒度分析、ガンマ線(堆積物粒子密度の指標)測定も行う。上記の200年周期卓越部分について気候変化を調べるために、大阪湾1700-mコアの花粉分析を行う。50年以下の高解像度でも分析を目指す。 コアFukui-SG14については、引き続き200年周期部分の探査目的に、予察的磁気分析データを解析する。さらに、発見したラシャンエクスカーションの古地磁気データ、岩石磁気データを強化して、論文の国際誌への投稿の準備をする。そして、2006年に採取された水月湖コアSG06の古気候データ、14C生成率データと比較し、銀河宇宙線と気候の相関について解析を行う。更新世末期に見つけたエクスカーションについて、古地磁気データ、岩石磁気データを増やし、論文の国際誌への投稿の準備をする。また、この部分について、水月湖コアSG06の古気候データ、14C生成率データと比較し、銀河宇宙線と気候の相関について解析を行う。 更新世前期―中期境界付近についてコアTB2、大阪湾1700mコア、中国レスのもつ古気候データ、古地磁気データを比較し、銀河宇宙線と気候の相関に着目した解析を行う。
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