研究課題
最終年度は水月湖年縞堆積物コアSG14の岩石磁気分析・古地磁気分析を行った。その結果、自生の強磁性硫化鉄と砕屑性の酸化鉄が担う残留磁化成分を、交流消磁法を使って保磁力分布で分離する方法を開発した。従来行われてきた段階熱消磁法による分離では、高温酸化生成磁鉄鉱のノイズが初生磁化分離を困難にしてきた。新たな手法では、少ないデータ点でも主成分分析により信頼度の高い初生古地磁気成分が分離できる。新規開拓した手法を水月湖年縞堆積物コアのLL-channel試料の段階交流消磁データに適用し、最終氷期極大期直後に起こった地磁気エクスカーションを発見した。この時期に広く認知されたエクスカーションは存在しないが、120 ka ~ 8 kaの幅広い年代が報告されているTianchi Excursionや韓国済州島の堆積物から報告されている異常古地磁気方向に対比できる可能性がある。水月湖ΔC14データは同エクスカーションの期間、銀河宇宙線量の増加を示していない。このことは大幅なΔC14増加を伴うLaschamp Excursionとは発生原因が異なる可能性がある。研究期間全体では、チバニアン最初期の気候と銀河宇宙線量に周期150~200年の一致した変動現象を見つけた。気温低下期に銀河宇宙線が増加していることから、変動の原因がスベンスマルク効果が関わる雲の日傘効果による可能性が高いことを示した。水月湖年縞堆積物の高精度年代モデルと年縞年代学を駆使して、Laschamp Excursionの正確な年代と地磁気方位の反転速度を世界で初めて見積もった。さらに、38000年前のエクスカーションを新たに発見し、Post-Laschamp (Suigetsu) Excrusionと命名して公表した。どちらも、水月湖ΔC14データがピークを示す銀河宇宙線量極大と一致して起こっている。
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Communications Earth & Environment
巻: 3 ページ: 1-10
10.1038/s43247-022-00401-0