研究課題/領域番号 |
18K03808
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高橋 太 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20467012)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 地球磁場 / ダイナモ / 内核成長 / 熱史 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
地球型惑星の内部構造と熱史を考慮した数値ダイナモモデルを用いて、外核の対流によって生成される磁場の構造とその時間変動を調査した。数年間程度の比較的短周期な変動と、内核成長による10億年スケールの長周期変動の二つの視点から研究を行った。 短周期変動については、モデルから得られた仮想的な観測データに対するウェーブレット解析を行い、地磁気ジャークに類似する特徴的な不連続変動を検知することに成功した。この結果は、数値モデルが実地球と同じような速い磁場変動を再現できていることを意味しており、今後の数値ダイナモモデルを用いた地磁気予報への応用可能性が示唆される成果である。 長周期変動については、内核成長に関する熱史計算の結果に基づいて各種パラメータを与えることで、離散的な内核サイズでのダイナモシミュレーションを内部整合性を保ちながら行うことができるようになった。内核が成長すると成長率が大きく下がるために、外核の対流が起こりにくくなることが熱史計算より示唆された。多くのダイナモシミュレーションでは、内核外核の半径比が現在の地球の値よりも大きくなると対流が生じにくく、結果としてダイナモ作用が維持されない結果となった。この結果は、月磁場のような、比較的短時間でダイナモ作用が停止したような場合を説明する際のアイディアの一つとして使うことができよう。 固体天体の一つである水星を模した内部構造モデルを用いたダイナモシミュレーションによって、水星磁場の特徴を全て再現することに成功し、その物理過程を明らかにした。水星の外核の状態と進化を理解する上での重要な成果として評価できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内核成長に伴うダイナモの進化について集中して数値シミュレーション、研究を実施して一連の結果が得られ、一定程度議論することが可能になった。内核の結晶化による内部ダイナミクスへの影響は定式化と、モデルへの組み込みが出来るようになり、本格的なシミュレーションの準備が整いつつある。以上から現状ではおおむね順調に研究が進捗していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
内核成長に伴うダイナモ進化計算では、より広範囲でのパラメーター探査を行い、様々な進化シナリオに対するダイナモ進化のバリエーションを評価する。 内核結晶化に伴うダイナミクスへの影響については、先に対流計算を行い、その影響を調査することとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度得られた成果を考慮した結果、次年度により多くの計算機資源を利用することで、研究がより進展するであろうことが大いに見込まれた。したがって、より多くの計算機資源を使用するための使用料増加分として、今年度残額を充当することとした。
|