研究課題/領域番号 |
18K03809
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研究機関 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
野田 朱美 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波防災研究部門, 特別研究員 (80793992)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地殻内応力蓄積 / 弾性・非弾性歪みの分離 / せん断歪みエネルギー / GNSS観測データ / 西南日本 |
研究実績の概要 |
地殻内への応力蓄積と地震発生の関係を検討する上で、せん断歪みエネルギーが地震発生のポテンシャルを評価するためのより本質的な物理量であると考え、せん断歪みエネルギーと地震発生の関係性について検討を進めた。 顕著なせん断歪みエネルギーの変化が生じる例として2016年熊本地震に着目した。熊本地震時のGNSS変位データから推定した地殻内の応力変化と、中小地震のメカニズム解から推定されたテクトニック応力場の情報(Terakawa & Matsu’ura, 2010)を組み合わせて、地震発生による周辺地殻内のせん断歪みエネルギー変化の3次元分布を推定した。この結果を本震後1週間の余震分布と比較し、エネルギーの増加した領域で余震の約75%が発生したことを示した。そして、余震が完全にランダムに発生したと仮定して作成した100,000通りのデータセットと比較し、エネルギー増加域での余震の発生割合が統計的に有意であることを確認した。本成果は国際査読論文誌Geophysical Research Lettersに掲載された。 地殻内に蓄積した歪みエネルギーに基づく地震シナリオ構築の可能性について、理論的観点から検討を進めた。その第1歩として取り扱いやすいプレート境界地震を対象として、プレート境界での応力蓄積(歪みエネルギーの蓄積)をGNSSデータ解析により推定し、その結果に基づいてエネルギー収支の観点から地震発生シナリオを構築する手法を提案した。今後、プレート境界から内陸地震へ拡張が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
応力蓄積の指標となるせん断歪みエネルギーの定量的評価手法については当初の予定を超えて発展させることができた。一方、弾性・非弾性歪み解析手法の改良に関しては、テクトニック応力場を取り入れた手法の開発を予定通り完了したが、解析モデルの工夫により更なる解像度の向上が見込めるため、来年度も検討を続ける。そのため、進捗状況は「やや遅れている」とする。
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今後の研究の推進方策 |
弾性・非弾性歪み解析の推定精度向上のため、解析手法の改良を引き続き行う。解析結果の妥当性検証のために、地震活動の空間分布や地形・地質データとの比較を行う。せん断歪みエネルギーの蓄積/解放を定量評価し、過去の地震イベントと比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度成果を査読論文誌に投稿する際に英文校閲費として使用する。投稿時期が予定より遅れたため、次年度に繰り越す。
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