研究課題/領域番号 |
18K03812
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
浜田 盛久 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 研究員 (60456853)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 海洋島玄武岩 |
研究実績の概要 |
本研究では、微小な(直径数十ミクロンメートル)同一のメルト包有物の主要元素、微量元素、揮発性成分、水素同位体比、鉛同位体比などの多元素・多同位体比を分析し、それぞれの元素・同位体比同士の関連を調べることにより、海洋島玄武岩の成因及び地球内部の物質循環を明らかにすることを目的としている。その目的を達成するためには、急冷され、変質を受けていないガラス質のメルト包有物を得る必要がある。メルト包有物の状態が本研究の成否を決めると言っても過言ではないが、一般的に、海洋島の陸上に噴出して徐冷された溶岩からは、ガラス質のメルト包有物を得ることは困難である。令和元年度には、私を含む4名の研究者が南太平洋クック諸島のラロトンガ島及びアイツタキ島に野外調査に出かけ、噴火時に急冷されたと思われる海洋島玄武岩のスコリア試料を採取した。それらの試料中には、本研究の目的を達成するために適したガラス質のメルト包有物が含まれている可能性が高く、現在探索中である。併せて令和元年度には、国際深海科学掘削計画第351次航海(平成26年度に実施)によって採取された古伊豆-小笠原-マリアナ弧の火砕性堆積物中のメルト包有物の化学組成データを統計解析し、古伊豆-小笠原-マリアナ弧の1000万年間にマグマの化学組成がどのように変化したのかを議論した研究成果を論文として出版した(Hamada et al. 2020, Journal of Petrology)。本論文は、今後、海洋島玄武岩中のメルト包有物の化学組成データを統計解析して元素・同位体比同士の関連を調べるための予備研究と位置づけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
南太平洋クック諸島のラロトンガ島及びアイツタキ島への試料採取のための野外調査を、年度末の令和2年1月から2月にかけて行った。野外調査を年度末に行った理由は、安全かつ確実な調査を行うために、共同研究者との事前準備や、クック諸島政府から調査許可申請を得るための手続きに時間を要したためである。十分に事前準備をして、安全に調査を実施し、試料を日本に持ち帰ることができたこと自体は重要な成果であったが、その分、メルト包有物の分析の開始に至っておらず、研究計画に照らしてやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染拡大により自宅での在宅勤務を余儀なくされるようになり、クック諸島から採取してきた試料からメルト包有物を探し出したり、メルト包有物を分析する作業に着手できない状態が2カ月以上続いている。本研究の最終年度である令和2年度においては、在宅勤務が解除され次第、直ちに研究に着手し、分析するメルト包有物の数は多くなくとも、主成分元素、微量元素、揮発性成分、鉛同位体比といった多元素・多同位体比が揃ったメルト包有物の化学組成のデータセットを揃え、統計解析を行って、論文を執筆する。
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次年度使用額が生じた理由 |
私を含む4名の研究者の南太平洋クック諸島への旅費として、余裕を持たせて230万円を見積もったが、実際に掛かった旅費は200万円弱となった。このため、残額約34万円を次年度に繰り越すこととなった。次年度は、メルト包有物を分析するための旅費、学会で研究成果を発表するための旅費などとして、繰り越した残額を有効に使って研究を進めたい。
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