研究課題
本研究は、海洋島玄武岩の鉱物中に含まれる直径数十ミクロンメートルほどの微小なメルト包有物から主要元素、微量元素、揮発性元素、水素同位体比、鉛同位体比といった多くの元素や同位体比を分析し、それぞれの元素や同位体比同士の関連を調べることにより、海洋島玄武岩の成因や地球内部における物質循環を明らかにすることを目的としている。そのためには、噴火直後に急冷され、それ以降の変質を受けていないガラス質のメルト包有物を分析する必要がある。一般に、海洋島の陸上に噴出した溶岩は徐冷しており、その過程でメルト包有物内で二次的な結晶化が起こる。このため、溶岩の中からガラス質のメルト包有物を得ることは期待できない。我々は令和元年度に、南太平洋クック諸島の海洋島であるラロトンガ島及びアイツタキ島に野外調査に出かけ、発泡組織を持ち噴火直後に急冷されたと思われる海洋島玄武岩のスコリア試料を採取してきた。令和2~3年度に全岩化学組成分析を、令和4~5年度にメルト包有物の試料研磨を進めたが、残念ながらメルト包有物は二次的な結晶化を受けており、ガラス質ではなかった。令和5年度中に、代替策であるメルト包有物の加熱・均質化を実施することができなかった。本研究の初年度(平成30年度)に、海洋研究開発機構の研究船「みらい」による南太平洋クック・オーストラル諸島海域への研究航海に乗船参加し、海底の海洋島玄武岩試料を採取してきた。得られた試料の大部分は無斑晶質な玄武岩、または斑晶として含まれるカンラン石が変質している玄武岩であった。本研究の目的を達するために適した、変質を受けていないガラス質のメルト包有物は岩石試料中に含まれていなかったが、令和4年度に岩石試料の全岩化学組成分析を行い、その化学的特徴を制約した。令和5年度に岩石試料の年代測定を行い、周囲の島々における海洋島玄武岩マグマの噴出年代と整合的な結果が得られた。
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Island Arc
巻: 32 ページ: -
10.1111/iar.12498
東京大学地震研究所彙報
巻: 98 ページ: 1-29