研究課題/領域番号 |
18K03813
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
利根川 貴志 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 研究員 (60610855)
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研究分担者 |
西田 究 東京大学, 地震研究所, 准教授 (10345176)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 海洋性地殻 / 異方性構造 / カスカディア沖 / ハワイ沖 |
研究実績の概要 |
海外の大学・研究機関が太平洋に設置した海底地震計・海底圧力計のデータがIncorporated Research Institutes for Seismology (IRIS)から公開されており、これらのデータはPythonを使用することで自動でダウンロードすることが可能となる。本年度は、そのPythonプログラムを作成し、本科研費で購入したNASストレージにダウンロードできるよう使用中の計算機に実装した。 実際に、アメリカのプロジェクト「Cascadia Initiative」によってカスカディア沖に2011-2015年に設置された約160箇所の海底地震計のデータを自動でダウンロードした。取得したデータは遠地・近地地震のイベントデータである。 このデータを使用して本研究目的の海洋性地殻の異方性構造を推定するために、海底基盤や海洋性モホ面からのPs変換波が観測されているかどうかを調べた。その結果、これまで解析を行ってきた北西太平洋やオントンジャワ海台と比べてこの海域のノイズレベルが大きく、質の良い遠地・近地地震があまり観測されていなかった。遠地地震のP波がかろうじて観測できているデータのみを使用してレシーバ関数を作成してみたが、海底基盤は確認できるものの、鮮明な海洋性モホ面は確認できなかった。現在、カスカディア沖の解析を中断し、ハワイ沖に設置されたデータをダウンロードして海底地震計の設置方位を推定しているところである。今後、このデータを使用してPs変換波の抽出を試み、異方性構造の推定を行う。 また、海洋プレートとの比較のため、オントンジャワ海台下の異方性構造を海底地震計のデータを使用して調べてみたが、こちらはそれほど大きな異方性は確認できなかった。比較という意味で非常に興味深い結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主目的は、大量のデータを自動でダウンロードするソフトウェアの作成であった。これまでにPythonを学習してソフトウェアを作成し、そのソフトウェアの実装を行って実際にデータを解析できるところまでたどり着いた。 カスカディア沖の結果はそれほど良いものではなかったが、【今後の研究の推進方策】で述べるように、他の海域のデータを解析することで、本研究目的の達成を試みる予定である。以上の内容から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
カスカディア沖の海底地震計の記録では、それほど良質なP波が観測されていなかった。これはこの海域のノイズレベルが高いためだと考えられる。そこで本研究では、太平洋もしくはフィリピン海の海洋底年代が0-30 Maほどの海域に設置された海底地震計データを使用し、海洋性地殻の異方性構造を推定する。この年代はカスカディア沖のファンデフッカプレートの年代とほぼ同じである。具体的な候補としては、南米沖やフィリピン海のデータが入手可能である。これらのデータと、現在取り組んでいるハワイ沖データの結果を合わせることで、年代の異なる海洋性地殻の構造変化を調べる予定である。より古い年代に関しては、北西太平洋の結果を今年度に国際誌に出版したので、そちらを使用する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
NASを当初の見積もりよりも安い価格で購入できた。成果報告のための学会発表を次年度以降に予定しているため、繰り越した助成金で、次年度初期に成果報告用のノートパソコンを購入する予定である。
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