本課題は、3次元粒状体シミュレーションにより付加体の構造発達を模擬し、テクトニクスにおけるマルチスケール性を探る研究である。大規模個別要素法(DEM)シミュレーションにより、既往にはないスケールで粒状体の集団運動を再現することが技術的特徴となる。 前半のハイライトは、砂箱実験を模擬した数値砂箱実験により、断層形成時に粉状体内の水平方向に応力鎖がアーチ状の構造を自発的に形成し、そのアーチに沿って波構造が発達することを解明したことである。この結果は、付加体の海溝軸方向への湾曲が従来議論されてきた海山やプレート運動といった地質学スケールのマクロ不均質だけでなく、地殻に内在する微視的な不均質が集団運動を介して現れる巨視的な変形、つまりスケールをまたいだ地殻の変形プロセスにも起因し得ることを示唆する重要な発見だと考える。 後半のハイライトは、粘着力を加えることで岩石破壊挙動を模擬できるように要素間モデルを拡張することで、岩石の力学特性を模擬した要素による、数値岩石箱シミュレーションの開発である。海溝軸方向に周期境界条件を課した粒状体層の短縮実験により、順次断層形成される付加体に特徴的な構造が再現することに成功した。そして、粘着力モデル中のヒーリングに、表層角や表層亀裂、断層発達の分岐が、大きな影響を受けることを発見した。また断層形成プロセスにおける粒状性の役割として、断層厚みが物理的な長さよりも個別要素の数に依存している可能性を指摘した。 さらに最終年度に、上記の数値岩石箱実験において、ローカルに地震波を出す破壊的な要素運動が再現されることを発見した。そして、その波動伝播速度、断層破壊速度、応力降下量等の値は現実と整合的な結果であった。これは本アプリケーションが付加体構造発達から断層運動・破壊・地震波伝播までをシームレスに再現する新技術であることを示唆する研究成果となる。
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