研究実績の概要 |
本研究課題は火山深部低周波地震と火山活動、マグマ供給過程との関係を理解することを目的としている。当該年度においては、2019年5月末に箱根火山周辺の地震観測点で観測された連続的な微動波形の解析を行った。微動波形の包絡線(エンベロープ)の相関から観測点間での微動到達時刻の差を推定し、さらに前年度までに構築された地震波速度構造を用いて微動発震源位置の推定を行った結果、微動が過去に深部低周波地震が発生していた領域もしくはその深部延長から励起されたことが明らかになった。さらに流体移動に伴う非線形振動モデル(Julian, 1994)を、観測地震波形と比較できるように拡張させて、このモデルの枠組みのなかで波形の特徴が再現できることを明らかにした。さらに微動発生期間前後での地震連続波形記録に対して、マッチドフィルター法による深部低周波地震の検出を行った結果、この微動に伴い深部低周波地震が活発化したことも明らかになった。これらの結果から、微動及び深部低周波地震が火山深部からの流体移動に伴って生じる現象であることが示唆される。その他、静岡県立大学との共同研究のもと、富士山及び伊豆半島東方沖で発生する深部低周波地震についてマッチドフィルター法を用いた地震の検出を進め、過去の20年間での詳細な活動履歴及び浅部地震活動との関係性を調査した。伊豆半島東方沖での深部低周波地震については、2006年に浅部で活発な群発地震が起きた後に活発化したことが明らかになった。
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