研究課題/領域番号 |
18K03817
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
松原 尚志 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30311484)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 暁新世 / 貝類 / 日本 / 分類 / 古生物地理 |
研究実績の概要 |
今年度は北海道東部の霧多布地域に分布する根室層群霧多布層、釧路東部地域に分布する根室層群汐見層および、北海道北部の中頓別地域に分布する暁新統函淵層群奥宇津内層を対象に野外調査と化石試料の採取を行うとともに、標本のクリーニング作業および分類学的検討を行った。 霧多布地域の根室層群霧多布層については昨年度までに採取した標本に対してさらなる分類学的検討を行い、腹足綱10種、掘足綱3種、二枚貝綱12種を識別した。これらには腹足綱2新種が含まれ、また、北海道浦幌地域の暁新統根室層群活平層との共通種が6種、南サハリンのSinegorsk層との共通種が3種が確認できた。また、より上位の根室層群汐見層の貝類化石群との共通種は認められないことが明らかとなった。これらのことから、根釧地域の根室層群上部には白亜紀からの残存属・種の段階的な絶滅が記録されている可能性が示唆された。これらの研究成果については、2021年7月に開催された日本古生物学会2021年年会において口頭発表を行った。 釧路東部地域の根室層群汐見層については既知の産地から追加標本を採取の上、分類学的検討を行ったが、新たな種は確認できなかった。また、釧路町初無敵付近においては新たな産地を発見した。 中頓別地域の函淵層群奥宇津内層については、昨年度採取した1産地および2新産地から追加試料を採取した。昨年度採取した標本と合わせ、さらにクリーニング作業と分類学的検討を行った結果、産出種数は腹足綱2属2種、掘足綱1属1種、二枚貝綱7属7種となった。また、昨年度の実績報告でDelectopecten属の新種とした種はPalliolum属の新種であることが明らかとなった。これらの成果については学会発表に向けた準備と平行して論文原稿の執筆を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
北海道東部の浜中-釧路東部地域の調査・研究は概ね計画どおりに進んでいる。 一方、昨年度から今年度に延期した高知県中村-宿毛地域の百笑層と熊本県下島地域の姫浦層群上部亜層群最上部の調査および貝類化石試料の採取は実施できなかった。また、他の研究所蔵のタイプ・参照標本の検討については新型コロナウィルス感染症予防対策から実施できず、分類学的研究が滞っている状況にある。これらにより、研究の進捗状況は遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1年間の研究期間の延長が認められたため、最終年度である今年度は新型コロナウィルス感染症対策のため延期となっていた高知県中村-宿毛地域の百笑層ならびに熊本県下島地域の姫浦層群上部亜層群最上部の調査および貝類化石試料の採取を行い、クリーニングと分類学的研究を進める。また、延期となっていた他機関所蔵の後期白亜紀・古第三紀暁新世貝類のタイプ・参照標本の検討についても今年度に実施の上、分類学的研究を進める。すでに口頭発表が済んでいる道東の各地域の貝類化石群ついては論文原稿を完成させた上で投稿を進めていく。 これらの研究成果を踏まえ、日本の暁新世貝類化石群の分類および古生物地理的特定について総括を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、高知県中村-宿毛地域および熊本県天草下島地域での調査・試料採取、および、後期白亜紀・古第三紀暁新世貝類のタイプ・参照標本の所蔵機関での標本の検討が延期となったため。また、参加を予定していた日本古生物学会2021年年会がオンライン形式となったため次年度使用額が生じた。 この額については次年度に延期した高知県中村-宿毛地域ならびに熊本県天草下島地域への旅費と最寄りの空港から調査地までの移動のためのレンタカー借り上げ代、および、後期白亜紀・古第三紀暁新世貝類のタイプ・参照標本の所蔵機関(東京大学総合研究博物館、高知大学、大阪公立大学)での分類学的研究のための旅費に充てる予定である。
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