研究実績の概要 |
珪藻は,新生代の水圏において最も成功した低次生産者であり,地球環境と珪藻はともに影響を及ぼしあいながら進化してきた.なお,珪藻は遅くとも白亜紀前期には分類群として成立していたと考えられるが(嶋田ほか, 2014など),成立初期の様子については,それを証言する化石記録が新生代に比べて極めて乏しく,よくわかっていない. 本研究課題は,日本列島での最古の珪藻化石記録を北海道より得,珪藻の成立初期の分類や進化史の解明に臨むものである. 代表者(嶋田)らは,北海道の中軸帯にそって分布する蝦夷層群より,白亜紀の中頃(セノマニアンないしチューロニアン;100.5~89.8 Ma, Maは100万年前)由来の珪藻化石群集を得,最近日本古生物学会で報告したが(嶋田ほか,2017年日本古生物学会例会,於早稲田大学),2018年度は,北海道中央部三笠市より,白亜紀前期アルビアン期の日陰の沢層より,事実上「日本最古」となる珪藻化石群集を発見し,報告した(嶋田ほか,2018年日本古生物学会年会,於東北大学).この珪藻化石群集は,円筒状および円盤状で堅牢な形態をもつ多様性の低い分類群から構成されているが,この特徴は,南極海海底堆積物から報告された,分類研究に耐える唯一の同時期の群集(Gersonde and Harwood, 1990)と一致し,少なくとも属レベルで共通する分類群の存在を示唆する.つまり,全球規模での珪藻の適応放散が,白亜紀前期までには生じていた可能性がある.
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