2022年度から新所属先に異動して同年にキャンパス移転があり、2023年度開催予定の第2回アジア古生物学会議の組織委員会委員長としての業務が増加した影響もあり、本プロジェクト最終年度ながら期待したより研究時間に制限が生じた。しかし、以下の実績をあげた。 9月に北海道中川郡中川町の上部白亜系蝦夷層群と本別町の上部白亜系最上部~下部古第三系根室層群の野外調査を行った。既存の標本の歳出層準の確認などはできたが、見るべき追加標本の採集には残念ながら至らなかった。 博物館の所蔵標本の調査では、蝦夷層群産のプリオサウルス類化石4点(北海道大学総合博物館・中川町自然誌博物館・北海道博物館・国立科学博物館)の記載および再記載を終了した。成果は11月にタイで開催された IPC6 で口頭発表し、共著論文を査読つき国際誌に投稿した(査読中)。また、記載がほぼ完了しているむかわ町穂別博物館所蔵のポリコティルス類骨格標本HMG1067の3Dデジタル模型を足寄動物化石博物館と共同で作成し、全身骨格の復元と、穂別博物館が所蔵する1980年代から90年代にかけての発掘当時やクリーニング中の資料に基づいてクリーニング前の化石の保存状態の復元に取り組んだ。残念ながら年度を越えてしまったが、次年度中に投稿できる見込みである。 この他、国立科学博物館が管理している蝦夷層群や根室層群産から産出したサメの歯化石を再調査した。成果公表にはまだ至っていないが、これまでに報告のない種類の歯化石が含まれていることを確認したため、今後の研究をサメ化石の専門家と進める計画を立てている。
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