研究実績の概要 |
平成30年度に4年間の研究として開始した本科研費は,新型コロナ感染症蔓延のため令和元年度末から令和3年度に計画していた野外地質調査が実施できなくなった.そのための措置として令和4年度に補助事業期間延長を行った.令和4年度には徐々に渡航制限が解除されたことを受け,10-11月にタイ王国東部のサケオ地域(アランヤプラテート地域)において上部三畳系炭酸塩岩の追加調査を行った.この三畳系炭酸塩岩サクセションは従来報告のなかったもので,調査地域のアランヤプラテートから南のソイダオ地域,さらに南方のチャンタブリ地域にかけて広く分布するPong Nam Ron層の同時異相である.Pong Nam Ron層が火山岩片を大量に含むのとは対照的に,アランヤプラテートの三畳系炭酸塩岩には火山性物質や珪砕屑物は見られない. またこの調査では,タイ中部のペチャブン県Phu Nam Yod地域の三畳系Hua Hin Lat層の調査も行った.この地域のHua Hin Lat層は,主にペルム紀の石灰岩礫から成る石灰岩礫岩で,構造性の崖錐性堆積物起源である可能性がある.礫には前期―中期ペルム紀のものが多いが,より新しい年代の礫がないかを確認するため調査した. 室内での検討では,主にタイ北部ランパン地域で採取された試料の処理を行った.今年度は最上部ペルム系の有孔虫群集の詳細を明らかにすることを念頭に検討を進めた.その群集構成要素として,これまで報告のあったPalaeofusulina sinensis, Reichelina changhsingensis, Gallowayinella guidingensisなどのフズリナのほか,Colaniella cylindrica, Rectostipulina quadrata, Retroseptelinaなど,多様な小型有孔虫が含まれている.
|