研究実績の概要 |
平成30年度に4年間の研究として開始した本科研費は,新型コロナ感染症蔓延のため令和元年度末から令和3年度に計画していた野外地質調査が実施できなくなった.そのための措置として,令和4年度に引き続き令和5年度も補助事業期間延長を行った.令和5年度は,本科研費の主要調査対象地域であるタイ王国ランパン北部において調査を行い,最上部ペルム系から下部三畳系にかけての新たなセクションで柱状図作成,試料採取を実施した.このセクションでは,最上部ペルム系は有孔虫や石灰藻を主体とする生砕性泥質石灰岩(一部ドロマイト岩)から成り,その上位には成層した細粒ドロマイト岩が累重する.さらにその上位には,一部露頭の欠如があるが,ウーイド層準を挟む層状ドロマイト岩が続いている.このドロマイト層準が下部三畳系に相当するものと考えられる.このような層序はランパン北部地域の他のセクションでも確認できるもので,最上部ペルム系は生砕物に富む石灰岩,最下部三畳系は一部に微生物岩を伴う層状細粒ドロマイト岩,その上位にウーイドやピソイド層準を頻繁に挟むドロマイト岩からドロマイト質石灰岩,という一般的な特徴が組み立てられた.得られた試料について室内処理を行ったところ,最上部ペルム系層準からはこれまで以上に豊富な有孔虫群集が得られた.この群集はPalaeofusulina, Reichelina, Colaniella, Urshutenella, Paraglobivalvulinaなどの属を主要構成要素としている.三畳系についてはこのセクションからは有孔虫は検出できていない. このような研究成果について,6月にイタリア,ペルージャ大学で開催された国際有孔虫会議(FORAMS 2023)において発表を行った.なお,研究成果については現在,国際誌への投稿を念頭に,取りまとめを継続している.
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