微小Sn-3.0Ag-0.5Cu (SAC)はんだ試験片の疲労寿命と内部の初晶Snの分布形態との関係と,Cu/Sn系金属間化合物であるCu3Snの引張特性の温度依存性を調査した.疲労寿命と初晶Snの分布形態の関係は,引張・圧縮繰返し負荷による微小SACはんだ試験片の疲労試験を実施し,同負荷条件で疲労寿命が異なる試験片の間で,破断試験片の縦断面における初晶Snの分布形態を比較して調査した.縦断面内の初晶Snの形状を楕円近似し,その長軸が試験片軸となす角度(長軸方位)を比較した結果,長軸方位が45°に近い初晶Snが多い試験片の方が,0°方向や90°方向に近い初晶Snが多いものよりも長寿命であった.また, 45°方向の初晶Snが多い試験片のヒステリシスループの応力レベルは,これまでに調査した引張強さと初晶Snの方位の関係と同様に,0°方向や90°方向の初晶Snが多いものよりも低かった.すなわち,45°方向の初晶Snが多い試験片は低強度となる一方で,引張・圧縮繰返し負荷に対する耐疲労性は高くなることが判明した. Cu3Snの引張特性の温度依存性は,直径0.5mmの銅線の周囲にCu3Sn層を設けた複合材料型試験片とその母材である銅線試験片を用意し,各試験片の引張試験を室温と200℃で実施して調査した.すなわち,引張試験で得た2種類の試験片の応力-ひずみ曲線を複合則に適用してCu3Snの室温と200℃の応力-ひずみ曲線を導出し,それらを比較した.その結果,200℃におけるCu3Snの引張強さは,室温の50%程度の値となることが判明した.また,200℃におけるCu3Snの応力-ひずみ曲線では,一定応力でひずみが増加する様子がみられた.引張試験を一定ひずみ速度で実施したことを考慮すると,この現象はCu3Snが200℃でクリープ変形することを示唆するものといえる.
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