研究課題/領域番号 |
18K03833
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
明松 圭昭 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (20396766)
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研究分担者 |
後藤 啓光 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (90389718)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 複合材料・物性 |
研究実績の概要 |
CFRPは現在,最も注目されている材料の一つである。高強度,高剛性,耐食性に優れる,など,従来の材料にはない優れた特性を有するため,様々な分野で適用が進んでいる。成型後,熱硬化性CFRPの加工は機械加工されることが多いが,深穴微細加工は困難である。そこで注目されているのが高エネルギ加工技術である。中でもCFRPが低導電性の材料(導体である炭素繊維および不導体である樹脂から構成)である特性を利用した放電加工技術の適応がはかられている。しかしCFRPは導体および不導体の積層で構成されるコンデンサ特性を有する高抵抗材でもあるため,安定した放電加工が困難で,加工時に熱影響が出やすく加工後,強度低下等の問題が発生することがある。 これらの問題を解決するためには安定した加工が行えるように極間の電気抵抗を常に低く保ち,さらに加工部以外での熱の発生を抑える必要がある。そこで加工前のCFRP材表面に導電導入材を付着させ放電加工することで,加工表面に電気抵抗の低い導電性被膜を形成しながら加工する「補助電極法」の可能性を調査している。本手法は,加工開始時には導電導入材が極間の電気抵抗を低くする役割をし,加工が進行した際には導電性被膜(母材と導電導入材により形成される)を形成することで極間の電気抵抗を低く保つことが可能な手法である。ただし,導電性被膜を形成し続けるためには放電パルスを制御する必要がある。「放電パルス制御」を行うことで,市販の放電加工機では困難な導電性被膜を形成しながら加工部以外での発熱を抑えた熱影響の少ない放電加工が可能になると考えている。2019年には2018年に製作した独自回路を有する自作の放電加工機を用いCFRP材の加工を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,加工前のCFRP材表面に電気抵抗の低い導電性被膜を形成することで,熱影響の少ない安定した放電加工およびその評価技術の確立を目指している。本研究の最終目的は,「補助電極法」および「放電パルス制御」を用いた放電加工により熱硬化性炭素繊維強化プラスティック(CFRP)材に高アスペクト比の深穴微細加工を行うことである。大きな課題としてCFRPに導電導入材を付着し,導電性を維持しながら放電加工する技術「補助電極法」およびCFRP材表面に形成された導電性被膜に放電することで発熱を抑制し熱影響の少ない安定した放電加工を行う「放電パルス制御」をそれぞれ完成させることが必要である。そのために,2018年には熱入力の制御可能な放電パルス制御回路を作製した。この回路により市販の放電加工機では制御できない加工条件(放電電圧,電流,持続時間,雰囲気等)を制御「放電パルス制御」可能な放電加工機を製作した。2019年には独自回路を有する自作の放電加工機を用い銅電極によるCFRP材の加工を試みた。その際,試験片には加工の安定化を図るために放電加工を行う試験片上面だけでなく端面にも導電性を上げる処理を行った。その結果,従来の加工では困難であった熱硬化性CFRP材に熱影響の少ない微細加工の可能性が見いだせた。この結果に関しては2019年11月21日,22日に開催された電気加工学会全国大会(2019)において「CFRPに対するコンデンサ放電加工の試み」という表題で講演を行った。
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今後の研究の推進方策 |
熱硬化性CFRPは成型後に加工性が悪くなるため汎用材とはいい難い面を有する。そこで導電性を維持しながら放電加工する技術(「補助電極法」)および市販の放電加工機では設定できないパラメーターを独自開発した放電回路を用い制御加工する技術(「放電パルス制御」)を用いることで困難だった熱影響の少ない微細加工の可能性を探っている。2019年は2018年に製作した加工部に生じる熱影響を抑えるために熱入力の制御可能な放電パルス制御回路を用い熱硬化性CFRPの加工を試みた。その際,加工の安定化を図るために試験片表面に導電性を上げる処理を行った。その結果,従来の加工では困難であった熱硬化性CFRP材に熱影響の少ない微細加工の可能性が見いだせた。安定した放電加工の可能性は見いだせたが,本手法により加工された加工面は当初予想された導電性被膜が形成された加工面とは異なり,加工深さ方向によって特性が変化する加工面であることが推測されるため,想定とは別の評価が必要であると考えられる。そこで今後行う加工面の特性評価については研究開始当初計画していた光ファイバセンサを用いた単発放電撃力の計測ではなく,表面および深さ方向の材料評価に汎用的に用いられている微小荷重を用いた加工面評価を計画している。本手法であれば,本学で所有している試験機を用いれば計画をほぼ変更なく遂行できると考えられる。以上に研究により,加工面の特性評価技術の可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
熱入力の制御可能な放電パルス制御回路を用い熱硬化性CFRPの加工を試みた。その際,加工の安定化を図るために試験片表面に導電性を上げる処理を行った。想定していたよりも簡便な処理で加工が可能であったため,導電導入材等の購入が少なく研究を進められた。そのため物品費を抑えることができた。関連する国際会議の参加について,国内で開催される会議に参加したため,旅費の支出を抑えることができた。
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