CFRPは現在,最も注目されている材料の一つである。高強度,高剛性,耐食性に優れる,など,従来の材料にはない優れた特性を有するため,様々な分野で適用が進んでいる。成型後,熱硬化性CFRPの加工は機械加工されることが多いが,深穴微細加工は困難である。そこで注目されているのが高エネルギ加工技術である。中でもCFRPが低導電性の材料(導体である炭素繊維および不導体である樹脂から構成)である特性を利用した放電加工技術の適応がはかられている。しかしCFRPは導体および不導体の積層で構成されるコンデンサ特性を有する高抵抗材でもあるため,安定した放電加工が困難で,加工時に熱影響が出やすく加工後,強度低下等の問題が発生することがある。 これらの問題を解決するためには安定した加工が行えるように極間の電気抵抗を常に低く保ち,さらに加工部以外での熱の発生を抑える必要がある。そこで加工前のCFRP材表面に導電導入材を付着させ放電加工することで,加工表面に電気抵抗の低い導電性被膜を形成しながら加工する「補助電極法」の可能性を調査している。本手法は,加工開始時には導電導入材が極間の電気抵抗を低くする役割をし,加工が進行した際には導電性被膜(母材と導電導入材により形成される)を形成することで極間の電気抵抗を低く保つことが可能な手法である。ただし,導電性被膜を形成し続けるためには放電パルスを制御する必要がある。「放電パルス制御」を行うことで,市販の放電加工機では困難な導電性被膜を形成しながら加工部以外での発熱を抑えた熱影響の少ない放電加工が可能になると考えている。2021年には2020年に発見された特異な放電加工面の特性を調査した。新たに発現する加工面は高密度な炭素繊維で形成されていると推測され,従来の手法では作製できない新生面の創成が可能であることが分かった。
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