研究実績の概要 |
1年目の研究実績より,新たに断面30×40mm,長さ100mmの角柱試験片を作製し,一定の荷重速度で単軸負荷と除荷を繰り返す圧縮試験により非線形な変形挙動を実測し,供試レンガの非線形な変形挙動を表現する構造モデル化にチャレンジした. 実験は,試験片を圧縮する前に共鳴振動法により初期動弾性率を測定した.次に,試験片に設定した最大荷重まで圧縮した後,一律の最小荷重30Nまで除荷した.ついで,最大荷重と最小荷重の間で負荷と除荷を数回繰り返した.なお,試験条件は,最大荷重を3kN, 4kN, 5kNの3条件,1秒当たりの荷重速度を75mN, 750mN,7500mNの3条件の合計9条件とした.実験の結果,初期の負荷開始点の接線弾性率は動弾性率とほぼ一致すること,また1回目の負荷で最大荷重点Aのひずみに達した後,最小荷重点Bまで除荷すると,試験片にはB点で数μεの圧縮ひずみが残留するが,再び最大荷重と最小荷重の間で負荷と除荷のサイクルを繰返すと,荷重速度を変化させても荷重-ひずみ関係はほぼ同じA点とB点を通り,かつ一定のヒステリシスループを描くことがわかった. 供試材が圧縮荷重下において可逆的なヒステリシスループを描き,かつ荷重速度依存性がないことが実験的に確かめられたので,本研究では,供試材の力学モデルは弾性ばね要素と構造粘性による減衰要素の組み合わせで表現できると考え,最大荷重点Aと最小荷重点Bとの間の荷重と変位の挙動を定常状態とする運動方程式を検討した.その結果,2回目以降の最大荷重点と最小荷重点の荷重-変位挙動は,ばね要素と構造粘性要素を並列につなげたフォークトモデルで表現でき,荷重速度による挙動変化は起きないが,レンガに加える最大荷重が増すとレンガの構造が変化して力学モデルに含まれる構造粘性のばね定数ik’が変化することがわかった.
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