研究課題/領域番号 |
18K03837
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中井 善一 神戸大学, 工学研究科, 教授 (90155656)
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研究分担者 |
塩澤 大輝 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (60379336)
菊池 将一 静岡大学, 工学部, 准教授 (80581579)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 疲労き裂発生 / 疲労き裂伝ぱ / マグネシウム合金 / 双晶変形 / 高輝度放射光 / トモグラフィ |
研究実績の概要 |
マグネシウム合金 AZ31を用いて曲げ疲労試験を行った結果,応力比の増加に伴い疲労限度が低下し,同一応力振幅に対する疲労寿命は短くなることが明らかになった.また,本材料における疲労強度の応力比依存性は,平均修正理論により説明できた.このことは,hcp 構造を有するマグネシウムに対しても,bcc構造やfcc構造の材料と同様の関係が成立することを示すものである.さらに,応力比によらず,本材料のき裂発生寿命比は同程度であった.また,疲労き裂の成長初期段階においては,き裂の屈曲がみられたが,その後,結晶粒界に沿って直線的に伝ぱした. 疲労き裂伝ぱに及ぼす平均応力の影響および双晶変形の関与について,破壊力学的および微視組織学的観点から検討を加えた結果,応力比の増加に伴い,下限界応力拡大係数範囲は低下した.また,応力比0.3以下ではき裂開閉口が存在し,それ以上の応力比では最小応力拡大係数においてもき裂は開口した.なお,き裂開閉口が生じない高応力比領域では,ΔKだけでなくKmax も疲労き裂伝ぱ挙動に影響を及ぼしていた.き裂伝ぱ速度da/dNとΔK 関係は顕著な折れ曲がりを示し,破壊機構の遷移が生じていた.なお,圧縮応力成分を含む応力比R = -1でも破壊機構は同様であった.そのため,本材料における疲労き裂の伝ぱに及ぼす双晶の影響は小さいと結論づけられた. さらに,高輝度放射光を利用した回折コントラストトモグラフィ(DCT)によってミスオリエンテーション測定を行うとともに,屈折コントラストトモグラフィ(RCT)によって変形計測を行った結果,引張および圧縮を負荷した際の全ミスオリエンテーションβの変化をDCTによって測定することにより,マグネシウム合金における変形と双晶発生との関係がわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した計画とおりに進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,EBSD解析によって最初の1サイクル中の圧縮応力下での双晶変形とそれに続く引張応力下での双晶変形の回復を明らかにしたが,平成31年度は,最初の2サイクルまで同様の観察を行った後,数100サイクル負荷し,その後の1サイクル中における圧縮応力下での双晶変形とそれに続く引張応力下での双晶変形の回復をEBSDによって観察する,更に,数100サイクル負荷するごとに同様の観察をする.なお,疲労では,最初の1サイクルでは大きく塑性変形しても,その後シェークダウンし,塑性ひずみが消失していくことがあるため,EBSD解析と同時に応力-ひずみ関係も測定し,双晶変形と塑性変形の関係を調べる. また,平成30年度に引き続き,SPring-8においても回折コントラストトモグラフィーによって,数100サイクルごとに圧縮過程および引張過程中のミスオリエンテーション変化の測定を行う.なお,これまでは,結晶粒全体のミスオリエンテーション変化の平均値の観察しかできなかったが,平成31年度には,測定技術および解析技術の向上を図り,個々の結晶粒のすべり面ごとのミスオリエンテーションを測定する.また,新たに開発したデュアルカメラ方式の測定技術を活用し,回折コントラストトモグラフィーと屈折コントラストトモグラフィーを同時に行うことによってき裂発生場所を同定し,き裂発生と双晶変形の関連,およびき裂発生場所の,き裂発生までのミスオリエンテーション変化を調べることにより,き裂発生条件を明らかにする.
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