研究課題
令和2年度は強度発現メカニズムの解明に主に挑んだ.まず,接合強度を向上させる要因を明らかにするために,ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を用いて,金属側に形成させた多孔質陽極酸化アルミナ(PAA)の累積細孔断面積(PAD)ならびに被膜厚さとの接合強度を調べた.このとき,PAAに樹脂が侵入してアンカー効果により両者は接合すると考えられるが,このアンカー効果の影響が大きくなると,樹脂は細孔から抜けることなく,樹脂破壊する.この樹脂破壊は,主として細孔内に浸入した樹脂とバルク樹脂との界面でのせん断破壊により生じると考えられる.そこで,まずPPSの引張強度を用いて,Huber-Mises-Henchyの降伏条件から各々のせん断強度を算出した.PAAの全ての細孔に樹脂が浸入したとき,接合界面での樹脂のせん断強度は細孔の累積断面積に依存する.今,隣り合う細孔同士が非常に密接していることから,その内部に浸入している樹脂を連続体としてみなすと,理論的には接合界面での見かけの樹脂の最大せん断強度は,バルク樹脂のせん断強度とPADから決まる.この見かけの樹脂の最大せん断強度を陽極酸化処理の時間ごとに算出し,理論的な最大接合強度とみなして接合強度の実測値と比較した.結果として,PADは陽極酸化処理時間10minでほぼ飽和に達し,見かけの樹脂の最大せん断強度も変化がなくなるにも関わらず,接合強度は10minでは理論値の半分程度であるのに対し,20minでは理論値に達した.したがって,接合強度がPADに依存していないことが示唆される.一方,被膜厚さは陽極酸化処理時間にほぼ比例して大きくなることが分かり,接合強度と明確な相関を示した.すなわち,樹脂のPAA中の細孔内への侵入によるアンカー効果の発現は,細孔のサイズよりも細孔の深さに強く依存することが分かった.
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