イオン導電性高分子アクチュエータは,電場を印可することにより,高分子電解質膜の内部に含有された陽イオンが水分子を伴って陰極側へ移動する.これにより電解質膜内部で体積膨張の偏りが生じ屈曲運動を示す.一方,パラジウムは水素吸蔵時に大きな体積膨張を示すため,水和陽イオンの移動とパラジウム電極金属の体積膨張を同時に利用することで,低電力,高出力なアクチュエータを創生できる可能性がある.そこで,本研究では水素吸蔵型イオン導電性ハイブリッドアクチュエータを実際に製作し,その機械的・電気化学的特性評価を行った. まず理論的検討として,アクチュエータを三層の片持ちはりでモデル化し,パラジウム電極の水素吸蔵に伴い発生する固有ひずみを用いて,片持ちはりに発生する曲げモーメントを導出した.続いて,塩化ビニルおよび高分子電解質を基材とし,パラジウム薄膜を電極としたアクチュエータを製作し,種々の電圧を印可した際の試験片先端部の変位測定実験を行い,理論モデルから発生する曲げモーメントを推定した.さらに,アクチュエータに付与される電荷量と水の電気分解により発生する水素量を関連付け,付与した電荷量からアクチュエータの発生曲げモーメントを関連づける実験式を導出した.また,発生する曲げモーメントを水素吸蔵起因によるものと,内部イオン移動に起因するものに分離し,それぞれの発生曲げモーメントへの寄与率を求め,電極厚さや試験片長さによる影響を調査した.その結果,電極膜厚が薄いほどアクチュエータの変形量は大きくなり,水素吸蔵により発生する曲げモーメントが大きく影響していることがわかった.また,試験片長さによる寄与率への影響は少ないが,試験片長さが短いほうが,水素吸蔵起因の発生モーメントの寄与率が大きく,アクチュエータの電極厚さは薄く,長さは短いほうが効果的であることがわかった.
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