研究課題/領域番号 |
18K03849
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
岸本 喜直 東京都市大学, 工学部, 准教授 (20581789)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / 逆問題 / マルチマテリアル / マルチスケール / マルチフィジックス / データ同化 / 界面剛性 / 界面強度 |
研究実績の概要 |
当初の研究実施計画にしたがい,本解析システムの適用範囲とシステムを実用化した際の課題を明らかにするため,接合部界面における介在物の影響に関する調査を実施した.具体的には,まず接合部界面に接着シートやガスケットを挿入した試験片を製作し,昨年度と同様の打撃試験と,本解析システムによるシミュレーションを行った.ここで,基礎試験片の母材は昨年度と同様の鋼板とアルミ合金板を複数のボルト・ナットで締結したものとした.打撃試験の結果から,接合部界面に接着シートやガスケットを挿入すると,接合部界面の応力分布すなわちボルト・ナットの締付力の変化に対して,試験片の固有振動数の変化は緩やかになった.本解析システムによるシミュレーションではこの現象をよく再現できており,かつシミュレーションから得られた応力分布や固有振動数の計算値は妥当な数値であると考えられたことから,本解析システムは接合部界面に介在物が存在する場合でも適用できる可能性のあることがわかった.加えて,本解析システムの実用例として,トンネル天井板を模擬した鋼板とコンクリートブロックからなるミニチュア試験片に対しても適用を試みた.ここで,鋼板とコンクリートブロックの間には,ゴム製の支承材を挟んだ場合と挟んでいない場合の二通りに対して,打撃試験とシミュレーションを行った.打撃試験とシミュレーションの結果がよく一致したことから,本解析システムは原理的には有効に機能すると判断できた.一方で,ボルトの本数の増加や,接合部界面が多数存在するようになると,当初の想定していたとおり,解析に要する計算時間が増加し,実用上十分な時間内で計算が終了しなかった.したがって,本解析システムを実用化するにあたっては,多数存在するボルトや接合部界面をいかに簡略化して,解析精度を保ちつつ,計算時間を短縮できるかに課題があるとわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画のとおり,解析システムの適用範囲とシステムを実用化した際の課題を明らかにするため,界面における介在物の影響に関する調査を実施した.介在物の一例として,接着シートやガスケット,ゴム支承材を対象とした打撃試験とシミュレーションの結果から,本解析システムは,これらの介在物に対しては適用可能であることがわかった.本解析システムを実用化するにあたっては,多数存在するボルトや接合部界面をいかに簡略化して,解析精度を保ちつつ,計算時間を短縮できるかに課題があるとわかった.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画にしたがい,引き続き,本解析システムの適用範囲とシステムを実用化した際の課題を明らかにするため,界面における介在物の影響に関する調査を実施する.界面における介在物の影響の調査としては,接合面上にサビを設けた試験片を製作し,基礎試験片と同様の試験と解析を行い,数理モデルの改良と適用範囲の確認を行う.2019年度の研究からわかった,ボルトの本数の増加や,接合部界面が多数存在する場合に対しての課題を解決するために,ボルトや接合部界面の簡略化のノウハウを構築することを試みる.これは,本研究の本質である界面の数理モデルの改良を,シミュレーションの簡略化の観点から検討するものである.具体的な実用例としては,実際の自動車のフレームやトンネル天井板を想定しており,打撃試験においてはこれらのミニチュア試験片の準備を進めている.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定のとおり,2018年度からの残額を含めて,実験装置,試験片材料の購入,研究成果の発表(旅費,学会参加登録費)に助成金を使用した.2019年度までの残額は2020年度に試験片材料費や論文掲載料として使用予定である.
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