2019~2020年度は本解析システムの適用範囲とシステムを実用化した際の課題を明らかにするため,界面における介在物の影響に関する調査と大規模シミュレーションの実施を計画していた.2021年度は2020年度に実施できなかった打撃試験と数値シミュレーションを中心に研究を再開した.界面における介在物の影響の調査については,当初予定していた接合面上にサビを設けた試験片を用意した.具体的には,鋼板二枚を八組のボルト,ナット,座金で締結した後,塩水に浸して錆びさせた.試験片は錆びさせた後にボルト,ナット,座金を取り外したうえで固着した鋼板二枚を引きはがしてから再度組み立てた.サビのある試験片の固有振動数はサビのない試験片よりも低くなること,ならびに事前に実施した本解析システムによる数値シミュレーションの予測結果とよく一致することを確認した.大規模シミュレーションの実施については,ボルトおよび接合部界面の簡略化ノウハウの構築を目指して,新たにねじ部および座面部の界面剛性が固有振動数に与える影響を本解析システムを用いて調べた.ねじ部および座面部が変形しない剛体モードの固有振動数には,ボルト・ナットの締付力の変化に伴うねじ部および座面部の剛性変化の影響は見られなかった.一方で,ねじ部および座面部が変形する振動モードの固有振動数には,ボルト・ナットの締付力の変化に伴うねじ部および座面部の剛性変化の影響が見られた.しかしながら,このときの固有振動数の大きさはボルトの寸法が小さくなるにつれて高くなり,これまで本研究で用いてきた試験片の固有振動数よりも極めて高かった.したがって,本研究の範囲内では,ねじ部および座面部の剛性変化の影響は小さく,無視できるものと判断した.
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