組紐技術を利用して炭素繊維を中空円筒状に編組し、繊維強化プラスチック(FRP)を作成することによって、同一質量の鋼構造物と比較して5倍以上の機械的性質を示すFRP製造技術を開発することを目的として研究を進めた。研究の初年度、熱可塑性樹脂フィルムの上に薄く開繊した炭素繊維を埋め込んだフィルム状の中間基材を細くスリットしたテープ(以後CFRTPテープ)を用いて組紐構造プリフォームを作成し、熱間プレスにより、熱可塑性樹脂製品(以後組紐CFRTP)を成形し、短時間でCFRTP成形品を得ることができるようになった。前年度は組紐の編組条件とCFRTP製品の機械的性質の関係に着目し、中立糸を少なく層数を多く形成した製品と、1層への中立糸をできる限り多く挿入し、層数を少なく形成した製品を試作した結果、層数の多いCFRTPでは曲げ強度が500MPaを越える試料を、中立糸が多いCFRTPでは曲げ剛性が50GPaを越える試料を得ることができた。 CFRTPは熱硬化性樹脂によるCFRPと比較して、成形時間が短い、補修・再加工が可能、リサイクルが容易、破壊に要するエネルギが大きい等、優れた特徴を有する一方、樹脂粘度が高いため、立体的に複雑な形状をした製品が普及した例は報告されていない。 今年度はさらに組紐形成時においてCFRTPテープが中空円筒表面を隙間なく覆い、かつテープ同士が重なり合うことが極力少なく、テープが折れ曲がることがないような編組条件を探索し、曲げ強度で800MPa、曲げ弾性率で100GPaを超えるCFRTPパイプを得ることができた。この成果は当初目的の「同一質量の鋼構造物と比較して5倍以上の機械的性質」に対して、鋼の比重7.8、CFRPの比重1.5を勘案すると、弾性率では6割程度の達成度ではあるが、曲げ強度においては目標を大きく上回ることができた。
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