令和2年度は令和元年度までに得られたNiTi合金の超弾性や形状記憶特性が切りくず生成機構に与える影響について学術論文2報,学会発表2件の発表を行った.また,令和2年度は切削前に予加熱を行うことによるNiTi合金の切削性改善と最適加工条件に関する検討を行った.その結果,予加熱を行わない条件では加工中に被削材の温度が相変態限界温度(Md)を超えないため,被削材は不可逆的な超弾性形状回復を示し,部分的な相変態が生じることを明らかにした.この現象は切削速度が25m/minから100m/minに増加するにつれて増加し,高速条件では寸法精度の低下や切削抵抗の増加,工具寿命の低下を招くことを明らかにし,高速条件はこの合金の加工に適していないことがわかった.一方,極端な低速条件(10m/min)では加工中に構成刃先が大量に堆積した.予加熱条件では,予め被削材の温度をMd温度以上に加熱することにより,今回用いたオーステナイト系NiTi合金(室温)の被削性を大幅に向上できることを明らかにした.また,予加熱を実施したときの最適条件は 25m/minから50m/minであることがわかった.これらの得られた結果について学術論文1報の発表を行った.さらに,令和2年度は超弾性がNiTi合金の切削性と切りくず生成機構に及ぼす影響を調査するために,ハイスピードカメラを用いてNiTi合金の2次元切削における切削中の切りくず生成状態を記録し,得られた動画をデジタル画像相関法(DIC)による解析を実施した.その結果,NiTi合金の超弾性回復量を定量化することが出来た.
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