研究課題/領域番号 |
18K03873
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡本 康寛 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (40304331)
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研究分担者 |
篠永 東吾 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (60748507)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 銀ナノワイヤ透明導電膜 / 近赤外光 / パルスレーザ / 除去加工 / 視認性 / 色差 / ヘーズ / フレキシブル |
研究実績の概要 |
情報化社会において重要なインターフェースのフレキシブル化に貢献できる銀ナノワイヤ透明導電膜に対する近赤外パルスレーザによる高品位除去加工を目指して,試料の光学特性の評価,レーザ照射系のセットアップを実施した後,基礎的な加工特性を評価した. 照射されたレーザ光のうち反射および透過することなく材料に吸収されるレーザ光が加工プロセスに主に寄与する.そこで積分球を備えた分光光度計を用いて,銀ナノワイヤ導電膜,PET,ハードコート層,銀ナノワイヤを保持しているアクリル系樹脂のみの透過率,および反射率を計測することにより吸収率を算出したところ,波長1umでは光吸収率は数パーセント程度であった. 次に,レーザ光スポット内における均一的な材料除去を目指してレーザ光強度分布の均一化を行った.ナノ秒パルスレーザにおいては,出力されたレーザ光を50um角コアの光ファイバへ入射させて集光することで,矩形で均一な強度分布を得た.一方,ピコ秒とフェムト秒パルスレーザではマスクを用いた結像光学系を用いることで,矩形で均一な強度分布のレーザ光を得た. そして,作製した光学系を用いてパルス痕が重ならない条件において,200fs,1ps,10ps,10ns,100ns,500ns程度のパルス幅による銀ナノワイヤの基礎的な加工特性を評価した.測定電圧DC25Vで抵抗値が20MΩ以上となるような絶縁特性が得られる照射条件においては,パルス幅が短い方が熱的な影響は少なくなるものの,オーバーコート層に存在する直径100nm程度の銀ナノワイヤが除去された後の除去痕が顕在化し,視覚的に認識されやすくなった.この視認性を評価するために,色差(未加工部と加工部の差)を色差計により,透過光の拡散性を示すヘーズ(Haze)をヘーズメータによって評価したところ,視覚的な傾向を数値として評価できる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度の実施計画である「光学特性評価」,「強度分布の変換」を実施し,「近赤外光による加工特性の解明」に取り組んだ.そして,「レーザ光照射条件が除去形態に及ぼす影響」,「絶縁状態評価」,「視認性評価」の評価の一部を計画に沿って実施することができた.それにより,近赤外光による銀ナノワイヤ透明導電膜のレーザ除去加工特性の議論を進めることができ,次年度以降の計画内容を予定通り実施できる体制を整えることができた.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度においては,おおむね順調に研究計画を遂行できたことから,2019年度は当初の計画通り,2018年度に引き続き,「加工特性の解明」として「レーザ光照射条件が除去形態に及ぼす影響」,「絶縁状態評価」,「視認性評価」を進めるとともに,「加工メカニズムの検討」のために,「偏光と加工特性」ならびに「電磁場温度解析」を実施遂行する.
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