研究課題/領域番号 |
18K03875
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
吉川 浩一 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (90274547)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 掛け流し放電加工 / 掛け流し速度 / 加工速度 / 加工屑 |
研究実績の概要 |
計画書年度のH31年度も,申請時の研究計画にしたがって,高速加工を可能とするくり抜き加工経路の基礎検討を行った.申請時には3種類の加工経路の比較を想定していたが,1種類を追加し,4種類の加工経路について加工速度を比較した. 具体的には,L字形工具電極先端側の向き(水平向き,上向き,下向き)と,電極の送り方向(横送り,上送り,下送り)を組合わせ,(1)水平向き上送り,(2)水平向き下送り,(3)上向き横送り,(4)下向き横送り,の4種類とする.電極素材は無酸素銅製φ3丸棒とし,加工液は電極把持部から噴射する.電極の送り距離は,工作物表面から深さ方向に10mm,表面に沿った方向に12mmとする.実験前は,加工経路(1)と(3)は加工液が電極先端まで供給されにくく,加工速度も遅くなると予想しており,数値的には加工経路(3)の加工速度が最も遅かったが,最速値26.1(mm^3/min)の97.7%であり,大きな差はない結果になった.原因として,深さ方向の加工距離が10mmで浅かったため,経路の違いによらず,ある程度の加工液が電極間に供給されていたためと思われる.また,加工液の噴流量を,約1(L/min)から3(L/min)まで4段階に変更して行った実験でも,加工速度はほとんど変わらなかったが,電極消耗速度は3L/minのときに最小になった. さらに,その次の研究計画として想定していた,加工液への粉末添加による高速化についても,並行して実験を行った.粒子径を0.89μmから6.34μmまで5段階のWC粉末を添加した結果,粒子径が最も小さいWC粉末を添加したときに,無添加に対して約23%加工速度が増加し,電極消耗率は約49%減少した.この原因を検討するため,放電波形を一定時間取得し正常放電回数を計測したところ,粒子径が小さい方が正常放電回数が減少する傾向が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の3年計画で計画2年度に予定していた,②加工経路の最適化について,4種類の加工経路による加工速度を実測し比較することができた.結果的に加工経路による差が小さく,よりよい加工経路の探求途中である. 一方,当初計画では,最終年度に予定していた,③加工液への粉末添加の効果について,添加粉末の粒子径を変更した加工速度の実測を行った.これにより,実験条件の範囲内では,最小径の粒子を添加したときに,加工速度が増加する結果を得られた. 課題②については,予定よりもやや遅れているが,課題③についても一定の結果が得られたことから,総合して,おおむね順調に進展している,とする.
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今後の研究の推進方策 |
課題②加工経路の最適化については,当初計画で想定していた,最も効果的な加工経路の探索途中なので,これを継続する.加工経路による加工速度に差が見られなかった原因の一つとして,加工深さが浅かったことが考えられるため,これを深くする実験を行う.また,加工液噴流も影響することが考えられるため,初年度の研究成果と合わせて,より広範囲に噴流速度を調整できる実験装置を製作する予定である. また課題③については,粒子の凝集状態を定量化することができなかったため,観察用の顕微鏡を導入するとともに,画像処理などを用いて凝集状態を定量化したうえで,凝集の影響の有無を実験的に確認していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に学会参加を予定していたが,新型コロナウィルスの感染拡大防止のために学会が中止になったため,出張に係る経費が残った. また,加工液中の微粒子の凝集観察で鮮明な観察画像を得るため,実体顕微鏡を購入する予定である.2019年度に購入を検討した時点では,経費の残りが充分ではなかったため,次年度に回すこととした. 計画最終年度の研究では,当初計画通り,加工実験に必要な消耗品を購入するとともに,上記の通り,微粒子観察用に実体顕微鏡を購入する費用に充当する.
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