本研究の最終目的は,工具電極と工作物の間に純水加工液を掛け流すことによる,「新・高速・省エネくり抜き放電加工法」の開発である.くり抜き加工法は,形彫り放電加工と比較して工作物の除去量が圧倒的に少ないことから,高速かつ省エネルギーの加工法として期待できる.本研究では,特にくり抜き加工法の加工速度の向上に着目し,加工速度をより高速化する三つの手段についての効果検証を目的とする. 当初計画通り,(1)掛け流し速度の効果実測を実施し,1.1~2.2[m/s]の掛け流し速度に対し加工速度は正の相関を示し,噴流速度が1.6[m/s]を超えると加工速度は約24 [mm3/min]に収束する結果を得た.次に(2)くり抜き加工経路の効果実測を行い,4種類の加工経路について加工速度を実測したところ,大きな差はない結果を得た.(3)微粒子添加の効果実測は,H31年度に先行着手した.WC微粒子を純水加工液に添加した結果,粒子径が最も小さいときに無添加に対して約23%加工速度が向上する結果を得た.また放電波形の分析結果からは,粒子径を小さくすると正常放電状態と思われる回数が減少する傾向が得られた.最終年度は,微粒子添加加工液を用いた加工の特徴をとらえる手段として,加工くず観察に取り組んだ.加工済み加工液から磁力で加工くずを吸着し,抽出した加工くずの観察画像から粒子径を求めた結果,微粒子添加加工液を用いると,粒子径の大きい加工くずの割合が増加することが分かった. これらの結果から,くり抜き加工の高速化には,掛け流し速度を大きくし,加工液に微粒子を添加すると良いことがわかった.くり抜き加工法に関する研究報告が少ないことから,これらの結果は新規に得られたものであり,重要で意義がある.
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