本研究は、主軸の支持剛性は玉軸受で確保し、磁気軸受によって主軸下端の運動を制御できるハイブリッド主軸を用い、電磁力により主軸・工具系の振動を制御し、小径エンドミル工具先端での動コンプライアンスを改善することでびびり振動を抑制することを目的としている。 ハイブリッド主軸はエンドミルと反対側の軸受を玉軸受としているため、マシニングセンタの主軸をそのまま用いた。エンドミル側の軸受けを制御軸受とするため、首下の長いツールホルダの下端にケイ素鋼板円筒部を圧入して主軸に取付け、その外周に電磁石を配置した。ツールホルダに細長い小径エンドミルを取付けて打撃試験を行い、主軸を含むツールホルダとエンドミルからなる振動系は2自由度、2重振り子でモデル化できることが分かった。またエンドミル先端の2次モードの動コンプライアンスのピーク値は、1次モードのピーク値よりも大きくなった。よって、基本的な制御機能を確認するため、2次の振動モードの根の実部が3倍になるように状態フィードバックベクトルの値を設計した。また1軸の制御系をアナログ回路で作成し、打撃試験により2次の振動モードのピーク値は約1/3に低減でき、用いた振動系のモデルと制御系の有効性を確認できた。 次に、状態フィードバックベクトルの値の変更を容易にするためにデジタル制御系を構築し、その有効性を検証した。その結果、エンドミル先端での動コンプライアンスの2次の振動モードでのピーク値は、最大で約1/5まで低減できた。 動コンプライアンスのピーク値の低減による再生びびり振動の低減効果を検証するため、切削実験により、安定限界の変化を調べた。その結果、1次の振動モードの根の実部を2倍、2次の振動モードの根の実部を4倍にする状態フィードバック制御を行うことで、びびり振動の発生限界は2倍以上になることが確認できた。
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