研究課題
今年度は,前年度製作した磁気レンズの磁束密度を3次元で実測し,設計どおりの磁束密度が得られていることを確認した.つぎに,製作した磁気レンズをイオンビーム装置に搭載して,ビームの収束特性を調べた.その結果,3段磁気レンズの使用によりビームが良好に収束されることが実証できた.補助事業期間全体を通じて得られた成果をまとめると以下のとおりである.カウフマン型イオンガンおよびその制御システムを設計,製作した.これによりArイオンビームが生成できたが,ビームは発散していた.そこで,ビームを収束させるために,永久磁石を用いた四重極磁気レンズを設計した.設計では,磁場ならびにイオンビーム軌道計算をおこなって永久磁石の配置を最適化した.軌道計算の結果,イオンガン出口におけるイオンビームの出力特性(エミッタンス)に応じて,2段または3段の磁気レンズにてイオンビームが収束できる可能性が示された.つぎに,ネオジウム磁石を用いた2段と3段の磁気レンズを実際に試作した.その磁束密度をガウスメータで実測したところ,シミュレーションと同等の値を得た.そこで,磁気レンズをイオンビーム装置に搭載して,収束特性を調べた.その結果,加工距離160 mmにおけるビーム径として,磁気レンズなしで36 × 32 mmであったものが,2段磁気レンズでは38 × 10 mmに,3段磁気レンズでは5 × 24 mmに収束できた.さらに,加工距離80 mmでは,5 × 12 mmに収束でき,アスペクト比をより小さくできた.得られたビームにより小径光学素子の高精度形状加工が可能かを数値計算で調べたところ,良好な結果が得られる見通しを得た.またビームのピーク電流は,3段磁気レンズにより,磁気レンズなしの場合に比べて2.3倍に向上した.これは,拡散したイオン粒子を良好に収束できたことを示すである.
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日本機械学会論文集
巻: 86 ページ: 20-00217, 1-14
10.1299/transjsme.20-00217