研究課題/領域番号 |
18K03882
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
大橋 隆弘 国士舘大学, 理工学部, 教授 (80277821)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 異種材接合 / 機械接合 / 十字引張強さ(CTS) / 引張せん断強さ(TSS) |
研究実績の概要 |
せん断パンチーダイのクリアランスを変化させてプレスせん断穴を1mm厚の鋼板(SPCE, SCCC, SGLCC)に穿孔した。プレス穴にはだれ、およびブレイクスルー角に起因するアンダーカットが、非接触三次元測定機により観察された。その後、鋼板をツキ板の上に置き、さらにその上にA5083アルミニウム合金板を置き、アルミ合金板側から摩擦攪拌を施した。その結果、アルミニウム合金板は穴内に充満し、機械的なインターロックを形成したことを、断面の光学像およびSEM-EDX観察により確認した。この継手について十字引張試験および引張せん断試験を実施した。 φ4プレス穴に関してはだれ側をツキ板に当てて接合したときに大きな十字引張強度(CTS)が得られたが、φ1穴のときはブレイクスルー側のときに大きなCTSが得られた。プレス穴のアスペクト比によって、プレス穴内面のアンダーカットが顕著になる側が、だれ側かブレイクスルー側か異なるためと考えられる。SEM-EDX観察によれば、供試条件ではアルミ―鋼板の界面は分離しており、冶金的な接合は観察されなかった。だれ側をツキ板に当てて接合したとき、だれ部に回り込んだアルミ合金のせん断がだれ部付近で起きており、前記クリアランスの変化に応じ、パンチ穴のだれ量、および、継手のCTSが変化することを確認した。測定されただれ量から、アルミ合金の理論的なせん断面積を計算し、これでCTSを除したところ一定値となり、CTSの主成因が上記の回り込みによる機械的接合であることがわかった。この値は、せん断引張強さ(TSS)から計算したせん断強度よりは小さくなったが、TSSは引張方向に対してインターロックが垂直に相対するが、CTSは角度が付き、変形・滑り易くなるためと考えている。φ4穴だれ面利用時、A5083-SPCEの最大平均CTSは431.9 N、同TSSは1659 Nであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、当初計画の「ⅱ.せん断強度・十字引張強度の評価(FY30下期~R 1上期)」「ⅲ.せん断時のクリアランスと接合強度の関係(R1下期~R2上期)」の調査について達成し、また、「ⅳ.応力集中を考慮した異径円孔列による継手形成と実証実験(R 2上期~R2下期)」にも着手しているので、R1,R2分の計画については前倒しで実施できている。ところが機器の故障のため、FY30年分の計画「ⅰ.FSFにより接合可能な最大・最小の下穴寸法と穴の密度の調査(FY 30上期~FY30下期)」について、条件の網羅的に未達部分がある。そのため、上記前倒し分を相殺して、現在までの進捗状況として「やや遅れている」と評価する。これについては成形機が古く、不具合や故障が多い(壊れかけている)ことが原因である。これについては今後の研究の推進方策に述べる通り、中古の成形機をもう一台購入することで環境を整え、研究を加速したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画の、「ⅰ.FSFにより接合可能な最大・最小の下穴寸法と穴の密度の調査(FY 30上期~FY30下期)」「ⅱ.せん断強度・十字引張強度の評価(FY30下期~R1上期)」「ⅲ.せん断時のクリアランスと接合強度の関係(R1下期~R2上期)」「ⅳ.応力集中を考慮した異径円孔列による継手形成と実証実験(R2上期~R2下期)」について、ⅱ.ⅲ.についてはすでに達成し、ⅳについてはすでに着手しており、このまま予定通り推進可能である。ⅰについては、温度測定システムの自作部を増やし費用を圧縮すること、コロナ禍にともない発表予定の国際会議がR3以降に延期となっているため、旅費を圧縮することで費用を捻出し、(FY30下期~R 1上期)でⅰ.に関する網羅的実験を加速的に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
成形機故障・不調のため、計画の一部が未達となったため、温度測定システムの自作部を増やし費用を圧縮すること、コロナ禍にともない発表予定の国際会議がR3以降に延期となっているため旅費を圧縮すること、さらにそれらとR2分の交付額と併せて費用を捻出し、中古の代替機器を探して購入することとなった。そのため、当年年支出予定であった実験材料やセンサーなどの物品費は、学内予算で賄った。
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