本研究では、鋼板に対する慣用せん断と、Al合金に対する摩擦攪拌成形を組み合わせて機械的継手を形成する、新しい異種材接合手法について検討した。具体的には、慣用せん断穴群を下穴群として有する鋼板を当て板上に置き、その上にAl合金板を置き、さらにその上から摩擦攪拌を施すことにより、Al合金を軟化・塑性流動させて穴群を満たし、機械的に接合する工法を提案し、実証実験と強度評価を行った。研究の第一段階として、直径1~9mmの丸穴キャビティを有する金型上にAl合金板を置き、Al合金板の背面から条件を変えて摩擦攪拌を施すことにより、丸穴内に Al合金材料を流動させ流入体積を調査することで、流動可能なAl合金の体積(すなわち、継手構造に利用できる体積)を調査した。次に直径2~5mmの4種のプレス穴あけパンチと、各穴より0.2~1.0mm直径が大きな穴あけ金型を用い、1mm厚SPCC鋼板のせん断加工を行った。形成された穴を非接触三次元測定機で調査した。その後、穴あけされた鋼板と3mm厚Al合金板を重ね、接合した。EDXにより異種材間の界面を観察したが、本実験条件では冶金的に接合しなかった。一方で穴のアンダーカット構造に流動したAl合金が嵌合し、機械的な接合か観察された。せん断引張強度(TSS)、十字引張強度(CTS)を測定したとことろ、、TSSは形成されたリベット状機械的継手構造の直径(すなわち、せん断プロセスにおけるパンチ直径とほぼ等しい)から計算される断面積によく相関した。CTSは、プレス穴のアンダーカット構造内に満たされたAl合金のオーバーハング部の長さから計算されるせん断面面積によく相関した。また、鋼板側における応力集中を考慮するため、異形円孔列を用いた継手について商用FEMシステム(ANSYS)を利用して設計し、実際に作成された継手についてせん断強度を調査し、効果を確認した。
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