研究課題/領域番号 |
18K03892
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
藤尾 三紀夫 沼津工業高等専門学校, 制御情報工学科, 教授 (70238541)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 磨き加工用CAM / セラミックファイバーブラシ / 表面粗さ / 5軸制御 / 凹凸球面 |
研究実績の概要 |
CAD/CAMシステムが高度化される中,切削加工後の金型表面の磨き加工は熟練技術と多くの手作業の時間を要し,自動化が求められている.一方,近年オンマシンでバリ取りや一部の磨き加工を実現する工具が市販され,これらを活用して自由曲面に対応した工具経路を生成することで磨き加工を自動化できる可能性が出てきた.そこで本研究ではこれらの工具を用いて5軸制御することで磨き加工をオンマシンで自動化する「オンマシン自動磨き加工用5軸CAMシステム」を開発し,自由曲面磨き加工の自動化の実現を目的としている. 本年度は,半径200mm凹凸型の円弧面,球面について,切り込み量と工具経路およびブラシ径を変えて加工実験を行ない,磨き加工が可能であるかについて検証を行った.磨き表面の粗さは基準粗さRa5μの表面を,汎用的な金型の表面粗さRa0.2μmに磨きあげることを目的とした.昨年まで利用した半径15mmのブラシを用い,切り込み量は0.2,0.0,-0.2mmに変え,工具経路は等高線および走査線工具経路で比較実験を行った.また,ブラシの直径が25mm,15mm,6mmの場合について比較した.さらに,工具経路生成手法として3DCADであるRhinocerosのAPIを用いて,等高線および走査線工具経路を生成するCAMシステムの基本システムを構築した. その結果,凸面において切り込み量が0.0,-0.2mmmm(Z軸上方向)では磨けない一方,凹面では同じ切り込み量であっても磨き加工が行われ,0.2mmでは磨き過ぎて加工形状が崩れることがわかった.一方,工具経路については差異がなく,面に対して同一姿勢である方が磨けないことがわかった.またブラシの差異については,ブラシの構造に大きく依存し,直径25mmではブラシの合成が低いため,6mmではブラシが変形して磨けないことが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
オンマシン自動磨き加工用5軸CAMシステムの開発について,3DCADのRhinocerosのAPIを用いることで選択した面に対して断面線から点群を生成し,面の法線ベクトルを求めてCLデータを生成し,等高線および走査線工具経路を生成するCAMシステムの基本機能を開発した. 磨き加工実験については,昨年度に直径15mmのブラシを用いて,半径120mmの凸形の円弧面および球面を対象に磨き加工実験を行った.まずは同一工具経路を用いて,ブラシを表面の法線ベクトルに傾ける5軸制御と同じ姿勢の3軸制御で加工実験を行った.その結果,3軸制御では段差が生じて幾何形状が劣化した一方,5軸制御では表面の形状劣化無しに,目標とする表面粗さ0.2μmで磨き加工できることを確認した.また主軸回転数は回転数が高いと遠心力により接触面接が減るため2400rmpが適切であり,また送り速度も1200mm/minが適切である事が明らかになった.磨き回数は多くすると磨き量は多いが時間がかかるため,等高線および走査線工具経路にかかわらず,法線ベクトルに対して常に変化する工具経路が有効である事が明らかになった. 本年度は,凹型の円弧面および球面を対象に,磨き量を0.2,0.0,-0.2mm(Z軸上方向)に変えて磨き加工を行った.その結果,凸面では磨けない-0.2,0.0mmであっても凹面では磨き加工が行われ,0.2mmでは磨き過ぎが生じ,幾何形状が劣化することがわかった.また,半径120mmの凹凸面を含む連続円弧面について0.2mmで磨き加工を行うと,凸面から凹面になるに従い,磨き過ぎが生じることが明らかになった.またブラシ径を6,15,25mmに変えて凸面を磨いた結果,ブラシの形状の差異による剛性の違いにより,6,25mmではブラシが変形して磨くことができないことが明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
オンマシンでの磨き加工用ツールとしてセラミックファイバーブラシを適用した結果,凹凸面での切り込み量の違いが大きく,凹凸面において切り込み量を適切に切り替える必要がある事が明らかになった.今後は,複合した凹凸面を対象に,ブラシを用いて切り込み量をどう制御すべきか検討を進めていく必要がある.また新たな磨き加工用ツールとして導入した,機上ポリッシングツール砥石(ラバーボンド砥石)について,まずは,対象となる形状や大きさ,および適切な工具経路の生成から,磨き加工方法を含め,磨き加工が可能化の検証を行う必要がある.そして,磨き加工実験を行うことにより条件の特性を調べ,磨きに適用できるか,またその有効性を検証する必要がある.さらにオンマシンで利用できる磨き加工用ツールとして多結晶ダイヤモンド焼結体(PCD)工具を用いた鏡面磨き加工についても導入し,対象となる形状や大きさ,および適切な工具経路の生成方法を含め,磨き加工の特性について検証する必要がある.さらに,これらの加工実験で得られた情報を反映したCAMソフトの開発のため,3次元CADのRhinocerosを活用した汎用的なコードを開発する. これらの磨き加工実験およびCAMソフトの開発を通し,最終年度には,複数の曲率や立壁を有する汎用的な磨き対象形状を総合評価モデルとして準備し,加工部位に応じて,適合する磨き加工用工具を使い分けて磨き加工実験を行うテスト加工を行う.そして磨かれた自由曲面の形状精度と仕上げ面あらさ等に基づいて,工具経路や磨き加工条件の評価を行い,最終的に提案するCAMシステムの総合的な検証と評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
1年遅れで磨き加工用ツールである機上ポリッシングツール砥石(ラバーボンド砥石)を導入したが,従来使用していたセラミックファイバーブラシとの加工条件,特に切削油の条件が異なるため,その調整にメーカとの打ち合わせと調整の時間を要し,加工実験に至らなかった.また機上ポリッシングツール砥石の導入とメーカとの磨き加工条件の調整が遅れ,併せてその次のステップとなる,鏡面磨き加工用ツールである多結晶ダイヤモンド焼結体(PCD)工具の導入も遅れている.現状では新型コロナウイルスの関係もあり,メーカとの調整が遅れているため,加工実験が進められず,全体的に遅れが生じている状況である.企業再開に併せて,早急に加工実験を開始し,ツールの導入及び専用PC導入によるCAMシステムの開発も進める必要がある.
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