研究課題/領域番号 |
18K03897
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
倉橋 貴彦 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (00467945)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トポロジー最適化 / ベアリング / 乗り心地 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
H30年度では,定常問題に対してトポロジー最適化プログラムによりひずみエネルギーを最小とするベアリング形状に関する考察を行った.ひずみエネルギーの最小化に対しては,随伴変数法を適用し,弾性変形解析に対しては有限要素法を適用した.ベアリングのトポロジー最適化を行うにあたり、構造としての機能性を維持しつつ軽量化することを考え,適切な解析領域に関する検討を実施し,また,初期質量の値を変えることで,肉抜き度合いがどの程度変わるか調査を行った.集中荷重点,また支持点においては応力集中が発生するがFEMの解析ではメッシュサイズに依存しメッシュが細かくなる程応力の値が上がることから応力の算出結果そのものでは強度評価を適切に行うことができない.そこで,応力の評価に対して溶接の際に用いられる強度評価法を適用し,ひずみエネルギーを最小にしながら強度としても問題がないベアリング構造ついて検討を行った.乗り心地評価については,仮想空間上で試乗できるためのVR設備を整え,脳波計測装置を準備するとともに,脳波を分析できる環境を整えた.現在は,脳波の計測結果をもとにフェイススケール・スコアと呼ばれる指標により,乗り心地の良さを分類する試みを実施している.学会活動としては,日本応用数理学会2018年度年会にて研究成果を報告し,研究の進捗の結果を,JSIAM Lettersへ投稿し,また,現状の結果については,英文ジャーナルEngineering Optimizationへの投稿を目指し成果をまとめているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで,定常モデルに対して,ひずみエネルギーを最小とするトポロジー最適化プログラムに関する検証を行った.定式化においては,ひずみエネルギーを評価関数として設定し,弾性変形の支配方程式を制約条件としたラグランジュ関数を定義し,停留条件の誘導を行った.自己随伴形となる随伴方程式が得られることから,随伴変位を通常の変位場にマイナスの符号を付けた形で表し,随伴方程式を解かずに感度を得るプログラムを作成した.数値実験による検証を行ったところ,解析領域の設定の仕方によっては,ベアリング本来の機能性を有さない形状が得られる(軽量化により排除してはならない部分もトポロジー最適化の解析により肉抜きされてしまう)ことから適切な解析領域の選定に関する検討を行った.連携研究者の企業とのディスカッションを実施し,ベアリングとしての機能性を失わずに,ベアリングの肉抜き軽量化をするための適切な解析領域を選定し,解析領域や境界条件の設定法について連携研究者と合意を得ることができた.また,脳波測定に対しては,仮想空間内で乗車体験をするために,車走行試験による動画撮影を行い,VRゴーグルを使用して仮想空間で乗車できる環境を整えた.また脳波測定用の機材を整備し,脳波測定が行えるようにしたとともに,自己組織化マップによる脳波波形のクラスタリング(分類)をできる準備を行った.
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今後の研究の推進方策 |
現在のベアリングに対するトポロジー最適化解析においては,軸対称モデルとしドーナツ型の輪切り断面を用いた2次元解析を実施しているが,ベアリングに接しているスプリングの触れる箇所はベアリング底面全体ではないことから,精度良くモデルを表すためには三次元モデルへの拡張が必要である.また,今年度の研究においては静的なモデルに対してひずみエネルギーの最小化に関する検討を行ったが,本来は地面からのロードノイズによる振動を考慮したトポロジー最適化解析を行うべきであり非定常化も課題の一つである.このような点の改良が今後の研究課題である.また,脳波計測に対しては,脳波に対する周波数解析を行い,得られた波形に対して自己組織化マップによる分類を行い乗り心地の評価へ繋げていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
若干残額が生じたが,次年度に合わせて使用を予定している.
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