本研究では,振動する自動車用シャシー部品の振動抑制を目的とし,非定常のトポロジー最適化解析により,最適な形態の創出に関する検討を行った.また,自動車の乗り心地を定量的に把握するために,フェイススケールスコア等の評点を導入し,自動車の乗り心地について定量的な評価可否の可能性について検討を実施した. 本研究により得られた知見を以下に整理する.引張試験片のモデルに対して静的なトポロジー最適化を実施し,初期モデルと最適化後の結果との比較により,1割程度の重量低減効果があることを確認した.この内容をもとに,自動車シャシー部品のモデルを作成し,体積比率に対する固有振動数とひずみエネルギーの変動率を整理したところ同様の傾向を示すことがわかった.そのため,目的関数をひずみエネルギーとして,非定常モデルに対するトポロジー最適化を実施した.解析においては,ひずみエネルギーは時系列において正と負の値を示すことから,実際にはひずみエネルギーを有していても,時間積分すると相殺され適切にひずみエネルギーを評価できないという問題が生じた.そこで,負の値を示すエネルギーに対して絶対値を取ることにより,非定常のトポロジー最適化を実施し,自動車用シャシー部品に対しても最適な形態を求めることができた.また,上記の関連で,「自動車の乗り心地評価」を定量的に行う方法について検討を実施した.脳波を評点化したフェイススケールスコアを導入し,健常者・障碍者を想定し,乗り心地について検討したところ,普通車と軽自動車では普通車の方が「乗り心地は良い」という結果が得られた.また,脳波の各波形に依存しない乗り心地の良さの評価法として,パワー含有率を用いた検討を実施した.主成分分析を用いて,道路状況の違い(公道と農道)に対する乗り心地の良さについて検討をしたところ,揺れが大きい農道の方が,「乗り心地が悪い」という結果が得られた.
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