研究課題/領域番号 |
18K03899
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
長谷川 浩志 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (40384028)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 設計工学 / 力学的感性 / 人間中心設計 / Human-centered computing / Brain machine interface / 位相最適化 / 脳波計測 |
研究実績の概要 |
本年度は,設計者個々にオーダーメイド化した脳機能情報取得手法の開発として,長時間の使用や反復利用でも安全性に問題がなく,持ち運び可能な非侵襲型の脳波計測装置による脳機能情報取得を試みた.脳波の測定位置は,国際10-20法に基づく電極とし,申請時に想定した想定部位の電極をベースに6,8,14chの組み合わせで検討を行った.この検討に際して,「太く」「細く」に対応した動画を視聴することで,判別特性を分析した.判別特性を判断するために,重回帰分析,ニューラルネットワーク,Time Delay Neural Network (TDNN)により判別関数を作成した.なお,TDNNは準備電位を考慮することを目的に導入した. つぎに,申請研究を進めるための基盤構築を試みた.経験的知識に基づく発想イメージの抽出と脳機能情報に基づく形状創生の研究を同時に研究できるようにするために,利用者がペイントソフトウェアを用いて発想イメージをスケッチし,トポロジー最適化の設計領域に変換できるツールを開発した.さらに,入力された発想イメージを初期形状としたトポロジー最適化手法を開発し,脳機能情報をもとに形状創生できる環境を構築した. 脳機能情報に基づく形状創生では,「力の流れを推定し,その後,力の伝達経路を短くする」ように形状設計する力学的感性に焦点を当てている.このことから,値を主体としたトポロジー最適化ではなく,値と方向を考慮したベクトルによるトポロジー最適化手法を申請研究に組み込む必要がある.そこで,研究代表らが研究開発を進めているACOによるトポロジー最適化手法についても精度改善を試みた.この手法は,主応力ベクトルをもとに形状創生していることから,力学的感性にもとづくレイアウト判断の助けになると考える. 本年度は,申請研究の脳機能情報取得手法の分析と効率よく申請研究を進めるための基盤構築を試みた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳機能情報取得手法の開発のために,脳波計測装置から得られた6,8,14chの計測情報を用いて重回帰分析,ニューラルネットワーク(NN),Time Delay Neural Network (TDNN)により判別特性を比較した.その結果,「太く」「細く」に対応したトレーニング動画(教師データ作成利用)を視聴する方式で判別関数の作成を試みた場合には,視覚情報を分析している一次視覚野と物体認知やエピソード記憶をしている側頭連合野の情報が判別特性に大きく影響を与えていることがわかった.これは,視覚や目視した物体の認知,形状変化というエピソードに脳の反応があったのではないかと推測される.次年度は,実際のトポロジー最適化プロセスに従った「増加減」をトレーニング環境とすることで,どの活動部位から情報が得られ,影響を与えているのか等の判別特性を本年度の結果をもとに詳しく調査する.つぎに,基盤構築では,経験的知識に基づく発想イメージを,ペイントソフトウェアを用いてスケッチし,そのイメージから脳機能情報を用いた形状創生ができる環境を構築した.さらに,力学的感性による形状創生の基盤構築では,新たにベクトルによるトポロジー最適化手法を試行することにした.この手法は,主応力ベクトルにもとづき形状創生していることから,力学的感性にもとづくレイアウト判断の助けになると考える. 本年度の結果は,形状創生を目的としたBMIの開発として日本機械学会2019年度年次大会にて成果を発表する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,脳機能情報取得方法のオーダーメイド化を試みる.平成30年度の結果を踏まえて,脳機能情報として取得すべき部位とそのチャネルの決定,直観的な印象判断を下す前に発生する運動準備電位を考慮できるTime Delay Neural Network(TDNN)による判別関数の生成を行う.また,脳波計測データに含まれる思考時の目の開閉(瞬き)などの動きや電磁ノイズなどのアーチファクトを考慮したロバスト設計論に従った形状創生を試みる.アーチファクトを誤差因子として取り扱うことで得られた判別関数から導き出された形状操作のための統計情報を,形状創生をするための形状操作パラメータに反映させることで,アーチファクトの不確かさ考慮した形状創生を試行する. 教師データ(データセット)生成のためのトレーニング環境は,実際のトポロジー最適化プロセスと同様のものとし,形状変化の「増加減」を判断させることで,どの活動部位から情報が得られ,影響を与えているのか等の判別特性を詳しく調査し,利用者個人に対するオーダーメイド化を実現するためのデータセットを生成する. 次に,オーダーメイド化したデータセットを用いて,中間層の最適構成を含めて最適なTDNNモデルを構築し,このTDNNモデルによる脳波情報を用いた形状創生を試みる.この試行では,局所的な梁の増加・減少を意識した形状創生などの複数シナリオを実施し,形状創生プロセスの検証を行う. 最後に,形状創生の基盤構築のためのトポロジー最適化手法の開発,新手法の調査・導入についても積極的に実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
脳波計測装置購入の検討をした結果,想定金額よりも安価で,性能がいいものを購入できたことと,脳機能情報を得るための脳波計測をオーダーメイド化を想定しておこなったため,謝金が不要になったこと.
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