研究課題/領域番号 |
18K03899
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
長谷川 浩志 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (40384028)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 設計工学 / 力学的感性 / 人間中心設計 / Human-centered computing / Brain machine interface / 位相最適化 / 脳波計測 |
研究実績の概要 |
本年度は,2019年度の研究成果を踏まえて,発想イメージの描画デバイス,BMIデバイス,脳機能情報取得判別モジュール,FEMモジュール,トポロジー最適化モジュールを組み合わせてシステム化を試み,すべてのデバイスとモジュールを統合したプロトタイプシステムを製作した. つぎに,経験的知識に基づく発想イメージの抽出として,利用者の個性や芸術性の高い形状を創生可能とすべく,トポロジー最適化の非設計領域(形状を保持する領域)に発想イメージを写像,非設計領域の位相配置や形状の太さを考慮した新たな全応力設計法を用いた形状創生式を考案した.その結果,力学的感性を考慮したうえで個性や芸術性などの設計者の芸術的感性の評価を重視した形状創生を可能にした.また,発想イメージの抽出のためのモジュールとして,イメージ画像から有限要素メッシュを自動生成する技術を開発した.これは,対象物体抽出精度の向上を目指してPSPNetを導入し,有限要素モデルを生成した.この妥当性確認を行った結果,良好な成果が得られた. 形状創生のための力学的感性を考慮したアプローチとして,力の伝達経路に着目した主応力ベクトルを考慮したACOによるトポロジー最適化に,環境要因である太陽偏向角や温度・時間の概念を取り入れ,改良を試みた.この導入した概念は,太陽コンパスと呼ばれるもので,「近くにフェロモンがなくても,餌を採取した後に太陽の偏光角から巣に帰ることができる」である. 最後に,利用者個人に対するオーダーメイド化のための妥当性確認については,COVID-19の状況下での複数被験者による試行が困難なことから2021年度実施に変更した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請研究に対して,本年度は,デバイスとモジュールを統合したプロトタイプシステムの製作と,経験的知識に基づく発想イメージの抽出として,利用者の個性や芸術性の高い形状を創生可能とすべく新たな形状創生式の考案とその検証を主眼に研究を行った. 統合システムのプロトタイプ製作では,本システムが設計者のための支援ツールであることから,すべてのデバイスとモジュールを800g以下の軽量かつ持ち運び可能な統合システムとすべく,インテルCore i7-1160G7のノートPCに実装した. つぎに,経験的知識に基づく発想イメージの抽出として,利用者の個性や芸術性の高い形状を創生可能とすべく,トポロジー最適化の非設計領域(形状を保持する領域)に発想イメージを写像,非設計領域の位相配置や形状の太さを考慮した新たな全応力設計法を用いた形状創生式を考案した.新たな手法による創生形状に対して,12個の形容詞対によるSD分析(7段階評価)を行った.その結果,力学的感性に基づく構造強度を維持し,芸術的感性を重視した形状を創生することが可能になった.さらに,発想イメージの抽出モジュールを開発するために,新たにPSPNetを導入した.この導入による精度向上を確認するために,FCN (Fully Convolutional Network)とPSPNetを用いて物体抽出精度の比較検討を行った.その結果,PSPNetを利用することで大幅に改善することができた.これは,Pyramid Pooling Moduleにより発想イメージ内の対象物体と背景をより正確に把握できたことが原因である. 以上,得られた知見や成果を3件の国内講演会で発表し,専門家による多数の助言を得ることができた.なお,国際会議での発表はCOVID-19の影響で本年度は実施しなかった.
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今後の研究の推進方策 |
申請研究に対して,本年度は,SD法を用いた分析結果(2020年度の力学的感性に基づく構造強度と芸術的感性評価)を踏まえたうえで,創生形状が「設計者の力学的感性に基づいた形状かどうか」の妥当性確認を実施する.この妥当性確認には,SD分析と脳波計測装置やNIRS(光トポグラフィ)による前向きな期待などの計測結果を用いた質保証手法を適用する.この妥当性確認結果により,本研究の問題点や改善点の模索を行う. また,利用者個人に対するオーダーメード化の実現のために,2020年度に製作したプロトタイプシステムを用いた複数被験者による試行を試みる.なお,本試行の結果,脳機能情報判別に改善が必要な場合には,エラー関連陰性電位を計測し,誤認識情報の反映等の対策と改善を行う.また,計画が進まない場合には,外部研究者と意見交換やBMIの研究動向を踏まえた対策を行う.なお,すべての年度で得られた知見は,適宜論文発表を行い,公表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で国際会議発表を行わなかったため,その差額分を次年度の論文投稿費用に充填する計画である.
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