研究課題/領域番号 |
18K03899
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
長谷川 浩志 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (40384028)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 設計工学 / 力学的感性 / 人間中心設計 / Human-centered computing / Brain machine interface / 位相最適化 / 脳波計測 |
研究実績の概要 |
本年度は,利用者個人に対するオーダーメイド化のための妥当性確認,すなわち「設計者の力学的感性に基づいた形状が創生されたかどうか」を確認するための創生形状評価プロセスを構築した.また,この構築した評価プロセスに従って,プロトタイプシステム(2020年度の研究成果)を用いた妥当性確認を実施した.この評価プロセスは,ASME V&V 10: Standard for Verification and Validation in Computational Solid MechanicsのV-modelに従うもので,アーチファクトの影響や感性に伴う定性的な変動を不確かさとして定義し,検証と妥当性確認をするものである.また,創生形状に対する評価には,形容詞対からなる評価尺度を用いたSD法(Semantic Differential Method)を適用し,不確かさを考慮した妥当性確認には累積確率分布を用いた方式を適用した. さらに,ポジティブな情動に対して活性化する前向きな期待に着目し,脳波情報に基づく創生形状の妥当性確認のための評価プロセスについても試行した.また,発想イメージ抽出のためのモジュールとしてイメージ画像から有限要素メッシュを自動生成する技術を開発し,対象物体抽出精度の向上を目指してPSPNet (Pyramid Scene Parsing Network)を導入した.この汎化性能を向上させるために,学習回数や仮想バッチサイズの関係についてさらなる検討を行った. 最後に,COVID-19の状況下での研究活動のため,国際会議への参加による内外の研究者間での意見交換が難しかった.この部分については,2022年度実施へと計画を変更した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請研究に対して,本年度は,利用者個人に対するオーダーメイド化のための妥当性確認を行った.この妥当性確認を実施するために,創生形状の質保証をするための評価プロセスを構築した.この創生形状評価プロセスは,ASME V&V 10の不確かさの定量化に従うもので,アーチファクトの影響や感性に伴う定性的な変動を不確かさとして累積確率密度分布にて定量化を行い,その差異により評価する.具体的には,複数被験者に対してBMI(Brain Machine Interface)を用いた形状創生と,自身の手動操作による形状創生を複数回実施して,SD法により評価した.この不確かさを伴った評価値により累積確率密度分布を求め,この差異を示す領域の面積を求めた.この面積を正規化することで評価した.これにより,プロトタイプシステムの検証を行った. さらに,創生形状の妥当性を確認するために,被験者の前向きな期待の脳波計測とSD法による因子分析を組合せた創生形状評価プロセスの提案を行った.この方法は,前向きな期待が発生する左前頭前野と力学的感性に関連すると思われる補助運動野の測定電極を用いてα波を計測する.この計測結果から活性化度合いを算出する.さらに,得られた創生形状に対して,12項目の形容詞対で構成される評価尺度を用いたSD法により評価を行う.これらの結果を総合して,被験者の創生形状に対する「好ましい」「好ましくない」の評価を可能にした.しかしながら,被験者が重要視する形容詞対によって,評価精度が左右されることがわかった. 以上,不確かさを考慮したASME V&V10による検証と妥当性確認のための創生形状評価プロセスを考案し,本申請研究の有用性を確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
本申請研究は,BMI利用による形状創生のため,アーチファクトの影響や感性のばらつきといった不確かさを織り込んだシステムである.そのため,利用者個人のオーダーメイド化の実装が極めて重要である.そこで,2022年度は,2021年度に得られた成果をもとに,国外の研究者と積極的に意見交換を行い,本システムの問題点の更なる改善と,新たな研究課題の発掘を進めて行く.また,利用者個人のオーダーメイド化を促進するために,例えば,TDNN(Time Delay Neural Network)のTDNN-F (Factorized TDNN)化といった新たな深層学習手法の導入をプロトタイプの改善として進めていく.さらに,発想イメージ抽出のためのモジュールとして開発したイメージ画像から有限要素メッシュを自動生成する技術に,新たにPSPNet (Pyramid Scene Parsing Network)を導入し,対象物体抽出精度の向上が可能になった.この成果についても,国際会議にて発表をする予定である. 最後に,COVID-19の影響で海外発表がままならなかったが,2022年度は積極的に実施して,国内外の研究者と意見交換を踏まえてさらなる対策と改善を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で国際会議発表を行わなかったため,その活動については次年度に繰り越しする計画である.
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