最終年度は,前年度までに開発された磁性粒子を混入させたUV硬化樹脂液滴を多数つなぎ合わせたマイクロ弾性機構を駆動するための磁場の制御技術の開発に取り組んだ.多数の磁極に取り囲まれた作業領域内の磁場は各磁極に取り付けられたコイルへの印加電流により生じるが,1本の磁極から発生した磁束は作業領域中心部へ向かうものの他に他の磁極へ吸引されるものがあり,磁極間の相互作用を考慮に入れなければ作業領域内の磁場を目標の状態に一致させることが難しい.これを解決するため,1本の駆動対象磁極から発生した磁束を他の磁極へ距離に応じて分配し,その重ね合わせを用いて精度良く作業領域内の磁場の強度と勾配を計算する手法を構築した. さらに,一度磁化された磁極はコイル印加電流が消滅した後も磁化され続けるため,この残留磁化の影響も計測しなければならない.しかし,本研究が対象とする作業領域は直径が200μm程度で極めて小さく,磁気センサを組み込むことは物理的に不可能である.そのため,磁極後端にホール素子を取り付けその計測電圧に基づき先端側の磁束密度を推定する手法を導入した. 以上の手法に基づいて6本の磁極を有する磁気テザー装置の作業領域内の磁場を制御する実験を実施し,磁気テザーに内蔵したホール素子の計測信号に基づき作業領域内の磁場を目標の状態に保ち,磁性粒子をマイクロピペットにより導入して目標位置に誘導する実験を行った.この結果,磁性粒子が所望の位置に誘導されることが確認でき,構築された手法により作業領域内の磁場を制御できることが確かめられた.この技術を用いることで,複数の磁性粒子混入液滴を断続的に生成し磁気テザーの作業領域に送り込むことができ効率の良い磁性マイクロ弾性機構の製作に寄与するほか,製作された磁性マイクロ弾性機構を駆動する際にも目標運動の達成に必要な磁場を精度良く生成することが可能となった.
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