豪雪地帯の交通インフラや通信インフラへの着雪や着氷による障害を回避するためには、 インフラの構造材表面の雪を、完全に滑り落とす機能(滑雪性)が求められている。申請者は滑水性(水を滑り落とす機能)が高いCNT(カーボンナノチューブ)複合シートにおいて、超音波振動を利用することで、滑雪性が向上することを確認しているが、そのメカニズムには未解明な点がある。そのため本研究は、超音波振動を利用した際に雪粒の状態を、せん断時と滑落時の雪粒とシート界面を詳細に観察することで、水の発生有無、発生範囲等から滑雪性の説明を試み、さらなる滑雪性向上を目指すものである。本研究の目的は、超音波振動を利用し、CNT複合シートと雪との摩擦を低減させ、振動による滑雪メカニズムを解明することである。 令和3(2021)年度は、本研究目的を達成するためにこれまでに滑雪性の向上が確認された低周波振動条件下において、雪とCNT複合シートの滑雪性を解明するための実験を低温室内において-4.0[℃]の低温環境のもと実施した。屋根などに積雪した界面付近の雪を想定し、点接触する氷球を対象とし実験を行った。滑雪性を比較すると、また振動の振幅と振動数の増加により滑雪性の向上も見られた。これは滑水性の傾向と同一の傾向が見られた。 水の発生有無について詳細な観察および解析を行ったところ,振動による界面の水の発生はなかった。これにより振動による氷試験片との摩擦低減について、その潤滑状態は固体潤滑であることが明らかになった。さらに加振の影響を振動加速度の観点から考察することで、滑雪性の向上の原因の一つに氷試験片とシート界面のスティックスリップの低減があると考えられる。 以上の実験および考察により得られた研究成果の一部をトライボロジー会議2021秋および日本機械学会北陸信越支部2022年合同講演会にて講演発表し公表した。
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