研究課題
本研究では,樹脂歯車のかみ合い振動データを人工知能で解析することで,歯車に発生する損傷モードを分類してその損傷度合いを評価するために,樹脂歯車の状態を表す諸量(かみ合い振動,かみ合い部近傍の温度,高速度カメラを利用した歯車側面からの画像)の回収を行い,回収した情報が有効に活用できるように処理を施して,人工知能の学習にとって不可欠な大量かつ多様な教師データを自動生成するシステムの開発を行うことを目的としている.これまでの研究結果として,かみ合い振動を画像化して人工知能で解析することによって,歯元き裂の発生を検知することが可能となっていた.申請の最終年度は,歯元き裂発生直前に生じる予兆の検知に取り組んだ.まず,測定したかみ合い振動をある周波数帯域(バンド)毎に分解し,樹脂歯車の運転試験の経過とバンド毎の周波数応答の変化を調査した.その結果,通常,歯車のヘルスモニタリングで解析されるかみ合い振動及びその高調波を含まないいくつかの周波数バンドで,歯元き裂発生前に変化が生じている現象を確認した.こうした特性が生じる周波数バンドについて考察するため,運転試験機のインパルス応答実験を行った結果,歯車対がかみ合っている状態と,そうでない状態で周波数応答に大きな違いが生じる周波数バンドが存在することを確認し,かみ合った状態で周波数応答のゲインが増加するバンドがかみ合い時の状態変化に対して感度が高いことがわかった.そして,計測したかみ合い振動のフーリエ変換による周波数解析を行い,変化に対して感度が高い周波数バンドのみをフーリエ逆変換して時間領域に戻し,その絶対値振幅を観察すると,き裂発生前に振幅値に変化が生じることが明らかとなり,それを変化点として捉えて人工知能用の学習データのラベルとして使用する方法を提案し,人工知能によって歯元き裂発生の予兆検知を行った.
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Mechanisms and Machine Science, Springer
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日本機械学会論文集
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