研究課題/領域番号 |
18K03908
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
松岡 広成 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (10314569)
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研究分担者 |
福井 茂壽 鳥取大学, 工学研究科, 特任教授 (40273883)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 表面力 / ミンドリンの解 / 応力分布 / 非接触状態の応力分布 / 材料分布によるせん断応力 / 材料分布による表面間力の変化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、分子間力によって発生する弾性体内部の応力発生特性・弾性変形特性の解明およびその次世代超高密度磁気記録への応用である。より具体的には、(A) 面内方向に材料分布あるいは材料特性分布があり、かつ、弾性体が非接触の状態において、分子間力に起因する表面間応力(垂直・せん断応力)分布および弾性変形の基本特性を理論的に解明すること、(B) 表面力測定装置(SFA)を用いて、理論により得られる結果を実験的に検証すること、(C) 磁気ヘッドの浮上特性解析に適用し、ビット・パターンド・メディア(BPM)におけるヘッド・ディスク・インターフェース(HDI)設計の指針を得ることである。 本年度は、まず、前年度に確立した計算手法を応用し、一様な材料で構成される物体内部の分子が、面内方向に2種類の1次元的な材料分布を有する物体から受ける力を算出した。これを弾性体内部の点荷重としてミンドリンの解に代入し、非接触状態において弾性体内部に生じる垂直応力・せん断応力分布を求める計算手法を提案した。前年度は材料分布が周期的な場合を取り扱ったが、今年度は2種類の物質が1か所で接合する場合を取り扱い、より本質的かつ一般的な問題に適用できるよう計算手法の拡張を達成することができた。また、前年度と同様にこれを数値計算するプログラムを開発し、応力分布をカラーマップで表し、基本特性を明らかにした。さらに、この応力を積分して力を計算するプログラムの開発に着手した。実験に関しては、表面力測定装置を用いて高分子材料の一種であるPDMSとガラス間の表面力を超高精度測定した。特に、時間依存性の一つである引き離し速度に着目して表面力の変化を調べ、その特性を明らかにした。また、弾性接触面の粘弾性を仮定した新しい接触・非接触モデルを提案した。さらに、この理論を磁気ヘッドの浮上特性解析に組み込むための手法の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論については、前年度に提案した1次元面内方向の材料分布に対する均質材料物体内の点荷重をレナード・ジョーンズ(LJ)ポテンシャルを用いて導出し、この点荷重をミンドリンの解に代入することで物体内の垂直応力・せん断応力の分布を計算する手法を拡張し、より一般的な2種類の材料に対する計算式の導出および計算手法の確立に成功した。また、この応力を積分して力を計算するプログラムの開発に着手した。実験については、表面力測定装置を用いてPDMSとガラス間の表面力を超高精度に測定した。特に、理論の検証を行うために必要となる引き離し速度依存性について検討し、その特性を明らかにした。磁気ヘッドの浮上特性解析については、上記理論の組み込み手法について検討を行った。 上記の内容は、当初の研究計画にほぼ合致しているため、本研究課題は概ね順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
理論については、昨年度から今年度にかけて構築した理論および計算手法を基に、分子間力に起因した表面力による弾性体内部の応力特性をさらに深く追求する。特に、材料が面内に2次元分布する場合の理論および計算手法を確立し、その基本特性を計算により明らかにする。また、磁気ヘッドの浮上特性解析に組み込めるよう、この応力を積分して力を計算するプログラムも開発し、その特性を明らかにする。 実験については、表面力測定装置を用いて表面力を超精密測定する。実験条件を変えてデータの蓄積を行うとともに、理論との比較について検討する。 磁気ヘッドの浮上特性解析については、表面力を組み込んだプログラム開発を行う。導出した理論や得られた実験データを適宜取り込むことにより、ビット・パターンド・メディア(BPM)に対するヘッド・ディスク・インターフェース(HDI)設計の指針を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、本実験に着手した段階であるため、実験用消耗品費が若干少なめであった。また、新型コロナウイルスの影響で、成果発表の予定であった年度末の会議が中止となったこともあり、旅費や会議参加費分が次年度使用額として残った。 今後の使用計画としては、実験が軌道に乗ってきているので実験部品・消耗品をより多く使用するうえ、成果発表の機会も増加すると予想されるため、特に問題なく使用が見込まれる。
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