前年度までにマイクロサイズのゲルアクチュエータを作製する目途が立ったので、マイクロサイズのゲルアクチュエータを自走するためのマランゴニ推進デバイスを開発した。非感温性ポリマーゲル中に808 nmに吸収を持つネオジム酸化物ナノ粒子、980 nmに吸収を持つイッテルビウム酸化物ナノ粒子を混合し分けることで波長選択性を与えた。このゲルに所定の近赤外光を照射して、異方的な温度勾配を用いて、水面上にマランゴニ対流を生じさせた。ゲルの形をひし形、プロペラ型などにデザインすることで、マランゴニ対流に乗って、直線移動や回転運動させることに成功した。このサンプルはブラウン運動や溶液抵抗の効果を受けにくいために、マイクロスケールにおいてもソフトロボットを自走させるための駆動力として有効だと考えられる。 このほかに、アクチュエータを改良する研究も引き続き進めた。感温性ポリマーに希土類元素を組み込むために、錯体ポリマーの相互侵入網目ネットワークゲルを作製した。これまでの感温性ポリマーと希土類錯体の共重合ポリマーネットワークだと希土類導入量の増加によって架橋密度が増加し、体積変化が低減するというトレードオフの問題があった。希土類酸化物ナノ粒子を混合する場合と比較して、10倍程度濃度を高めつつ、アクチュエータとしての機能も維持していた。単純なゲルの収縮・膨潤だけでなく、近赤外光照射時に感温部分と非感温部分を作り分けることで、曲げ動作が可能なアクチュエータも作製した。
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