研究課題/領域番号 |
18K03917
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
亀山 雄高 東京都市大学, 工学部, 准教授 (20398639)
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研究分担者 |
伊東 明美 東京都市大学, 工学部, 准教授 (40574041)
市川 裕士 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80451540)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | テクスチャリング加工 / 移着 / トライボロジー / 潤滑 / トライボフィルム |
研究実績の概要 |
物理的テクスチャ(うね構造)の形成挙動制御: 微粒子ピーニング(FPP)によるうね構造の形成について,ノズルスキャン条件をパラメータとして実験を行った.その結果,うね構造が自己組織化して発達する現象に対して,粒子の衝突頻度の大小が影響を及ぼしている可能性が考察された. 物理的テクスチャが摩擦特性に及ぼす影響の解明: 寸法が異なるうね構造を作り分けた試験片を準備し摩擦摩耗試験を行った.すべり速度を系統的に変化させて実験を行い,得られた摩擦係数の値をストライベック線図に整理したところ,ピッチが0.1mm程度,高さが10μm弱のうね構造を設けることで,平滑面よりも潤滑条件が改善している可能性が見出された.また,テクスチャ面における摩擦のその場観察を行うためのプラットフォームについても設計を進めた. 化学的テクスチャリングを利用したトライボフィルム形成挙動の改善: 鋳造アルミ合金へ鉄・硫黄を移着させ,移着成分と潤滑油剤中の添加成分とをしゅう動負荷下で反応させて有益なトライボフィルムの形成を促す実験に取り組んだ.硫黄を移着させるための複合粒子を試作し,これを用いて鋳造アルミ合金に鉄と硫黄を同時に移着させることができた.摩擦摩耗試験を行った結果,鉄を移着させたアルミ試験片では,Zn-DTP(汎用的なリン酸化合物系添加剤)の吸着が促されていることが考察された.このほか,鉄や硫黄の移着による効果と対比検証するため,他の粒子の移着による低摩擦化の可能性も模索した. FPPによる化学的テクスチャリングによる移着物と母材との微視的接合強度評価: FPPに用いた粒子の表面酸化状態が,移着物と母材との接合強度に及ぼす影響について実験を試みたが,試料の作製の関係で2020年度に実験を持ち越すことになった.比較対象として評価しためっき皮膜試験片については引張強さを大まかに推定することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年10月に台風の影響で本学キャンパスが水害に罹災し,研究活動が約1ヶ月停止を余儀なくされてしまった影響で,当初見込んでいたよりも実験を進めることができなかった面が否めない.ただし,進行は遅れたものの,研究計画遂行上重要な知見やノウハウ確立はできており研究成果は挙がっている.各研究項目について,以下に詳述する. 物理的テクスチャリング(うね構造形成)に関する研究では,2018年に完遂できなかった基礎実験についてまとまった成果を得た.また,テクスチャリング試験片に対する摩擦摩耗試験を行うためのノウハウを確立し実験にも着手した.研究の基本的方策は確立できたので研究計画遂行上大きな意義があった.ただし,実験停止期間の余波で,想定していたよりも実験N数が少なくなってしまった.本研究の申請時点では,エンジン実機での摩擦力計測を行う計画であったが,この内容については事前にテクスチャ面における油膜の形成挙動をその場観察する実験を行ってから本格的に着手する方針とした(2019年度予算の申請時に予算使用計画の変更を届け出たところである).これについても2019年度中に試験機の立ち上げを予定していたが,実際にはまだ設計が完了した段階となっている. 化学的テクスチャリングについての内容は当初構想よりも少し遅れながらも,本研究のカギとなる仮説を検証できそうな見通しが得られており,比較的順調に進捗したと評価している.ただし,元素分析的手法によるトライボフィルムの解析は十分に行えていないので今後の課題となる.また,移着物と母材との接合強度評価の実験が試料準備の関係で上手く行えなかったことから,この内容についても2020年度に持ち越すことになった.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に引き続き,物理的テクスチャ面への摩擦摩耗試験を行い,潤滑特性改善に有用なテクスチャの寸法要件を明らかにするとともにそのメカニズムについての考察を行う.そのために必要となる,摩擦その場観察のための試験機の運用開始に取り組む.また化学的テクスチャリングに関しては,移着させた硫黄成分がMo-DTC(汎用的なモリブデン化合物系添加剤)の持続的形成へ寄与するか否かという点に焦点を当てて検討を進め,とくに分析的手法によるエビデンスの確立に注力する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年に本学が台風による水害罹災を受けたことで実験が後ろ倒しになってしまったことで,それに関連して計上していた予算が次年度使用に回ることとなった.また,それと関連して一部の実験を外部の実験装置を借用して行ったため,本来であれば実験に当たって準備すべき機器や治工具類の調達を行う必要がなくなり予算がねん出された.昨年度時点で研究が遅れてしまっており,さらにコロナウィルスの影響が長期化しているという経緯があるので,ねん出した分の予算は,本研究で利用する試験機の増設により実験を加速することや,大学の供用設備を利用して行う計画だった分析作業を外部に委託して行うことに充て,研究の推進を図るために活用したい.
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