最終年度の目標は,歯車運転に適した竹歯車の成形条件を見いだすであった.本研究での一番の目的は,より高い負荷に耐えられる竹歯車を創製することである.しかしながら,この材料を歯車に加工した際,高い負荷に耐えられても,繊維強化により,物性値が変化し,これが歯車の騒音や温度に影響することが考えられる.いくら高強度化を成し遂げたとしても,騒音や発熱温度が高くなると歯車としての利用に適さない.そこで,繊維の体積率や成形温度を変えて竹歯車を製作し,目標とするPOM製歯車との比較を行った.その結果,騒音に関しては竹歯車とPOM歯車で大きな差異は認められなかった.一方,騒音については竹歯車は10の3条回転以降はほぼ同じ騒音の大きさを示したが,POM製歯車は,10の5条回転以降少し騒音が上昇する傾向が見られた.そこで歯車耐久試験時の歯車から発生する騒音の周波数解析を行った.その結果,POM製歯車は竹歯車と比較して,高い周波数で高い騒音レベルを示した.歯車の歯面の粗さ試験の結果から,歯面粗さ増加に伴う摺動音の増加であると考察した.以上の結果より竹歯車はPOM製歯車と比較して歯面の温度は同程度,騒音は小さくなるということがわかった. 研究期間全体を通じては,竹粉のみでは負荷トルク0.5Nm,1.0Nmでは10の7条回転まで耐えたが,1.5Nmでは破損していた.しかしながら竹粉を竹繊維で強化することにより作製した竹歯車は,負荷トルク1.5Nmにおいても10の7条回転まで耐えることできた.さらに歯車運転時の発熱温度はPOM歯車と同等,騒音については小さくなることが明らかになった.
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