研究課題/領域番号 |
18K03925
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
渡邊 威 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30345946)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 乱流変調 / 固体粒子群 / 質点近似粒子群 / 大規模シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、質点近似した微小粒子群による乱流変調について、その妥当性や信頼性を検証することにある。そのために、個々の粒子周りの流れを解像した粒子群と乱流の相互作用について解析し、同一条件下の質点近似粒子群による解析結果と比較することで、その問題点を明らかにすることを目指している。 流体と粒子群の連成問題の解法として、本研究ではVolume Penalization法を採用している。この手法は剛体を浸透率の小さい多孔質物体とみなし、流体方程式に粘着境界条件を満たすような強制外力を印加した計算を行う。ただしこの計算には浸透率を表す微小パラメータが存在し、これは陽的な時間積分において時間刻み幅の取り方に大きな制約を与える。このため、長時間積分の実施には膨大な計算コストを要する。そこで本年度は、有限サイズ粒子群の計算に陰的解法を導入することに取り組み、数値積分の時間刻み幅の制約を緩和することで、計算コスト削減に取り組んだ。静止流体中で球を単振動させた場合に、球に働く抗力を数値計算で評価し、理論解と比較することで計算の妥当性を検証した。その結果、陽解法を用いた場合に比べ、時間刻み幅を数倍程度大きくしても理論結果と矛盾しない振る舞いを示すことがわかった。 さらに質点近似粒子群による乱流変調の評価には、質点に作用する抗力は理論式に基づいた点と場の相互作用計算を行っている。この計算には抗力の正しい評価が必須である。質点粒子が存在する点での流体場そのものは、粒子自身により変形を受けるため、正しい抗力評価のためには非擾乱速度場を求める必要がある。そこで、一定の速度で沈降する質点粒子に働く抗力を評価し、ストークス抵抗によるものと矛盾しない非擾乱速度場の評価式の解析手法の詳細について、先行研究を基に解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有限サイズ粒子群による乱流変調の解析においては、計算コストをいかに抑えるか?がこれまでの課題として潜在していた。本年度はこれに集中して取り組み、粒子運動が予測できる場合には計算の目途を立てられる段階に至った。さらに乱流中での振る舞いを解析するための方法論を今後模索していくことになる。 質点近似粒子による乱流変調の解析は、順調に進んでいる。非擾乱速度場の評価方法が確立すれば、計算自体は難しいものではないので、結果がある程度見通せる状況にあると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
アップデートされたコードを用いて有限サイズ粒子群による乱流変調について解析を進めていくことが第一の課題である。また、質点近似粒子群による乱流と粒子群の相互作用についても、その計算の妥当性を再評価し直す。粒子自身によって誘導される攪乱場の自身への影響を取り除いた、非擾乱速度場の解析手法を確立し、質点近似の計算自体の精度を高めた結果について有限サイズ粒子群の解析と比較することが、研究結果を信頼できるものにするために重要であると考えている。現在解析を進めている段階であり、次年度にある程度結果を出せればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行の遅れから研究実施計画であげた大規模計算が出来なかったので、当初予定していた計算機使用料に経費を支出することがなかった。翌年度の予定は、当初の計算を実施するための大型計算機使用料、および論文投稿にかかる英文校正等に経費を充てる予定である。
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