研究課題
本研究課題の目的は、乱流中に浮遊した微小固体粒子群の挙動解析に用いられる、質点近似固体粒子と流れ場との相互作用に関する計算方法の妥当性や限界を検証することにある。粒径が流れ場の計算格子間隔に比べて十分小さい場合、抗力は粒子自身による擾乱を含むストークス抵抗を用いて評価できる。しかし両者が同程度のオーダーになると粒子自身が与える速度場への擾乱の影響は無視できない。この時は非擾乱速度を用いてストークス抵抗を評価する必要がある。昨年度は、非擾乱速度を求める手法の一つとして提案されているHorwitz and Mani (2016)の方法をスペクトルDNS法へ適用する方法について検討を行った。擾乱速度場から非擾乱速度を推定する際に用いる係数値が、スペクトル法の計算方法ではどのような値を示すか具体的な計算を行い、その妥当性や問題点について検証を行った。その結果、得られた係数値から求めた非擾乱速度は単一粒子周りの流れから得られる理論的な予測値と矛盾しない結果が得られた。しかし、この方法は複数個の係数値を事前に求めておく必要があり,多粒子系に拡張した計算への適用は容易ではない。そこで、最終年度では、ストークス近似による解(ストークスレット)を用いた非擾乱速度の評価方法について、その妥当性を検証した。この方法では数値解がストークスレットと同様の振る舞いをすると仮定し、非擾乱速度を評価するため解析に任意性が入りこまない。静止流体中の粒子の落下問題において検証を行った結果、格子間隔程度の大きさの粒子でも抗力を精度よく評価できることがわかった。その他、研究期間全体を通して得られた成果として、1.運動エネルギーの減衰の様子は,ダムケラー数を用いて整理されること、2.質点近似計算と有限サイズ粒子の場合に計算結果を比較すると、質点近似計算では乱流変調が過小評価されること、などを明らかにした。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
Physical Review Fluids
巻: 9 ページ: 054601
10.1103/PhysRevFluids.9.054601
Springer Proceedings in Physics, 34th IUPAP Conference on Computational Physics
巻: - ページ: -
Phys. Rev. Lett.
巻: 130 ページ: 254001
10.1103/PhysRevLett.130.254001